人の血液型は遺伝要因によって決定されますが、健康状態も遺伝の影響を受けることが知られています。例えば乳がんや糖尿病は遺伝の影響を受けやすい疾患だと考えられています。
さて、世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症ですが、その症状の程度には個人差があるようです。一般的には高齢者ほど重症化しやすいと考えられていますが、若年層でも死亡例が報告されています。このような症状の個人差については、遺伝要因が影響している可能性もあります。
そんな中、新型コロナウイルス感染症の重症化リスクと、遺伝要因の解析をした研究論文が、世界的にも有名な医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」の2020年6月17日付の電子版に掲載されました。この研究では、イタリア及びスペインの新型コロナウイルス感染患者のうち、重症化した1980人と、重症化していない2381人が対象となり、血液型(ABO型)と重症化リスクの関連性が解析されました。
その結果、血液型がA型の人では、A型ではない人に比べて重症化の可能性が45%、統計的にも有意に高いという結果でした。他方で、O型の人では、O型ではない人に比べて重症化の可能性が35%、統計的にも有意に低いことが示されています。
4000例規模の解析なので、ごくわずかなリスクの差を検出したにすぎず、実際の生活レベルでは大きな違いはないかもしれません。とはいえ、ノロウイルス感染症やマラリアなど、一部の感染症では、血液型によって感染リスクや重症化のリスクに差があることが知られています。
今回の新型コロナウイルス感染症についても、その重症化リスクに遺伝要因の影響があるのかもしれません。
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