これを書いている今、アメリカの感染者は300万人を超え、死者13万人以上、毎日5万人が感染している異常事態です。
中でも最大のクラスター発生源となっているのが全米の刑務所です。
以前、食肉加工場や老人ホームからクラスターが多く発生しているとお伝えしましたが、いま圧倒的に多いのが刑務所での感染で、全米のトップ・クラスター上位20カ所のうち17カ所が刑務所と拘置所です。
計8万4000人の受刑者が感染、700人以上が死亡したと報道されており、トップのロサンゼルス刑務所の感染者はもうすぐ3000人に達しようとしています。
密閉空間に多くの受刑者が暮らす刑務所で感染が増えることは容易に想像がつきますが、要因はそれだけではありません。例えば感染者数4位で約1700人の感染者が出ている北カリフォルニアのサン・クエンティン刑務所では、5月時点では感染者ゼロでした。
一方、南カリフォルニアのチノ刑務所では感染が広がり始めていましたが、看守が明らかにコロナの症状を示しているのに通常通り出勤していたと、受刑者が地元テレビ局のインタビューで語っていました。
山火事のように広がったコロナの対応に追われたチノ刑務所は、一部の受刑者をサン・クエンティン刑務所へ移送。対象者121人の受刑者は出発前の検査で陰性でしたが、検査は出発の数日前で、その後に感染する機会は十分にあり、体調不良を訴えていた者もいたといいます。この移送でサン・クエンティン刑務所で感染が爆発。重症患者がサンフランシスコ周辺の病院に移送され医療を圧迫しています。
アメリカでは、特に黒人やヒスパニックなどマイノリティーをターゲットにした大量検挙・投獄による受刑者人口の激増が大きな社会問題となり、今回のブラックライブズマター運動の焦点のひとつでもあります。
長い刑期を務め上げ、釈放直前の受刑者のひとりは「果たして生きてここから出られるのだろうか」と不安を訴えていました。
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