珈琲はクスリだ

<1>医学誌への論文掲載で健康を害する悪いイメージが覆った

1日3~4杯飲んで健康に
1日3~4杯飲んで健康に
日本人の疫学データからも証明されている

 リモート社会の到来で、喫茶店でパソコンとにらめっこするサラリーマンを多く見かけるようになった。その多くは珈琲を注文し、長時間居座る人の中には何杯もお代わりする人もいる。会社や自宅でも珈琲を飲んでいるであろうが毎日毎日そんなに珈琲を飲み続けて大丈夫なのか? 「コーヒーを飲む人はなぜ健康なのか?」(PHP出版)の著者で、「北品川藤クリニック」(東京・品川)の石原藤樹院長の話を聞いた。

「珈琲を単なる飲み物と考えるのは間違っています。嗜好品であると共に病気を予防するための薬です。ただし、薬ですから用法・用量を守って正しく飲む必要があります」

 いまでこそ珈琲は健康に良いものという情報が多く発信されているが、かつてはむしろ健康を害するものと考えられていた。覚醒作用と常用性があり、「目を覚ましてテンションを上げ、毎日飲まないと落ち着かない」というイメージがあったからだ。

■日本人の疫学データからも証明されている

 そんな珈琲がなぜ健康に良いと言われるようになったのか?

「イメージが覆るキッカケとなったのが、2012年のニューイングランドジャーナルと呼ばれる一流の医学雑誌に掲載された医学論文です。40万人以上の健康調査で、珈琲の摂取量と生命予後との関連を分析しています。珈琲を1日6杯以上飲む人は男性で10%、女性では15%、それぞれ有意に総死亡のリスクが低下したというのです。しかも、死亡原因別にみると、がんを除き、心臓病、呼吸器疾患、脳卒中、感染症、糖尿病、事故などによる死亡リスクの低下が明らかになったのです」

 とはいえ、それは欧米人の話で日本人は関係しないのではないか、と思う人もいるかもしれない。

 ところが、2015年には「アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション」という栄養学の専門誌では、日本の代表的疫学データを使い、同様の結果が得られたという。

「日本人のデータでは1日3~4杯飲む人が最も総死亡のリスクが低下していることがわかりました。ただし、5杯以上飲む人はリスクの低下幅が低下しているだけで飲んではいけない、というものではありませんでした」

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