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白血球と白血病<2>若い人の病気ではなく60歳以上が7割

2019年白血病を発症した競泳の池江璃花子選手
2019年白血病を発症した競泳の池江璃花子選手(C)日刊ゲンダイ

 白血病は、昨年2月、競泳女子の選手、池江璃花子さん(20)が発症し、大きな関心を集めました。入院治療は終了しましたが、一日も早い完治を祈りたいですね。

 池江さんが18歳という若さで罹患した白血病の診断病名は、正確には「急性リンパ性白血病」です。

 白血病は進行する速度やがん化した白血球の種類で分類されます。リンパ球からできるがんがリンパ性白血病で、「急性」と、病状がゆっくりと進む「慢性」の2つに分類されます。さらに好中球などに分化する骨髄系の細胞から発生する「急性骨髄性白血病」と「慢性骨髄性白血病」の2種類があり、全部で4種類になります。

 厚労省の調査では、白血病患者は男女合わせて1万3789人(2016年)と増加傾向にあり、60歳以上が全体の約7割を占めています。

 白血球になるべき元の細胞(幹細胞など)の遺伝子や染色体に傷がつき無制限に細胞増殖(増える)するようになることで、白血病になるといわれています。基本的には、骨髄、末梢血中のみでなく脾臓やリンパ節に存在する細胞からも生じるがんです。

 では、白血球をがん化させる主な要因にはどのようなものがあるのでしょうか。以下、列記してみましょう。

●喫煙。

●電離放射線(例として、長崎及び広島の原爆被爆)、または化学物質(例、ベンゼン)へ曝露。

●特定の抗がん剤、特にプロカルバジン(細胞障害薬)、ニトロソウレア系(尿素の水素が1個ニトロソ基に置き換わった化合物)などでの治療経験。

●ウイルス感染、HTLV―1:ヒトTリンパ球向性ウイルス1型、成人T細胞白血病ウイルス1型、エプスタイン・バールウイルス(ヘルペスウイルスの一種)に感染。

●染色体の異常、染色体転座といわれる、慢性骨髄増殖性疾患、染色体異常症(例、ファンコニ貧血=難病に指定されている染色体脆弱性を要因にする血液疾患)、ブルーム症候群(免疫不全を特徴にした常染色体劣の遺伝病)など。

 さらに毛細血管拡張性運動失調症、ダウン症候群、X連鎖無ガンマグロブリン血症(X染色体の遺伝子の変異に起因する原発性免疫不全症)なども、白血病の原因といわれています。

東丸貴信

東丸貴信

東京大学医学部卒。東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理・循環器センター教授、日赤医療センター循環器科部長などを歴任。血管内治療学会理事、心臓血管内視鏡学会理事、成人病学会理事、脈管学会評議員、世界心臓病会議部会長。日本循環器学会認定専門医、日本内科学会認定・指導医、日本脈管学会専門医、心臓血管内視鏡学会専門医。

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