先日家の中で転倒してしまった、と話す57歳の女性。体を支えようととっさに手をついたのだが、それが原因で手首を骨折してしまったという。
「ちょっと手をついた程度だったのにまさか骨折するなんて。骨密度強化のために毎日ヨーグルトを食べていた。それでは足らなかったんでしょうか」と不安顔だ。
「骨密度とは、骨を構成しているカルシウムやマグネシウムなどのミネラル類が、骨にどれくらい詰まっているかを表すもの。つまり、骨の強さを示す指標です」
こう言うのは、国際医療福祉大学熱海病院検査部・〆谷直人部長。ミネラル成分が不足してくると、骨がもろくなって骨折しやすくなる。骨密度アップのためには、食べ物はもちろん運動することも必要だと続ける。
運動は、日々の生活で簡単に取り入れられるものでいい。たとえば外出先でエスカレーターなどに頼らず、階段を使う。足裏全体で階段をしっかりと踏む、いわゆる「ベタ足」で上り下りをする。かかとから足裏全体で自分の体重を支える動きになり、負荷がかかって骨によい刺激を与えられる。
電車やバスなどに乗った時は、極力立つ。
「立っている時の方が骨に負荷がかかります。背筋を伸ばして姿勢良く立つと、より骨密度アップにつながりますよ」
椅子に座るのであれば、浅く腰掛け、おへそから下に少し力を入れ、足裏をしっかりと床につけるのがよい。
骨密度の高い、強い骨を作るには、コラーゲンとカルシウムが必要。体に吸収されにくいカルシウムは、ビタミンDとビタミンK2を含む食品を一緒に取るといい。日頃から取るべき食品を具体的に挙げると、プレーンヨーグルト、チーズ類、手羽元、牛すじ、皮付きの魚、納豆など。
一方で、避けたいのは糖分の摂りすぎや日常のストレス。これらは体内で多くのカルシウムを消費する一因になる。
たとえ年齢を重ねても、生きている限り骨量や筋肉を増やすことは可能だ。毎日の食事と普段の生活で、骨に負荷を与えて強くしたいものである。
▽〆谷直人(しめたに・なおと)
北里大学医学部医学科卒業。同医学部臨床病理学専任講師、獨協医科大学越谷病院臨床検査部准教授を経て、現職。 2020年1月より、日本臨床検査専門医会会長を務める。
「死ぬまで元気」を目指す