記者は50代の女性である。デパートやモールに出かけては、何を買うワケでなくてもぶらぶらする、いわゆるウインドウショッピングが趣味の一つだ。出かけた日に携帯の歩数計を見ると、たいていは1万歩を超えている。それを見ては「よく歩いたな」と満足するのだが、ふと疑問が沸いた。友人と話しながらのんびり歩くこの歩き方でも、運動になっているのだろうか。
「運動として捉えるのであれば、『私は今、しっかりと歩いています』という意識を持ちながら歩きに集中することをおすすめします。"買い物ついでにウオーキング"よりは、"ウオーキングのついでにちょっと買い物"ぐらいのほうがいいでしょう」
こう話すのは、パーソナルトレーナーとして活動する、アスレチックトレーナーの三田貴史さんだ。
ウインドウショッピングを「運動」に近いレベルまで上げるには、何を履くかも大事。しっかりと歩くための足元はやはりスニーカーがベストだ。スニーカーを履き、足の指で地面を蹴って押し出しているという意識を持ちながら、歩幅にも気を配る。
「なるべく大きめの歩幅で歩きましょう。歩幅が狭いと、使う筋肉量が減ってしまいます。使う筋肉量が多ければ多いほど、消費する酸素量が多くなる。そうすると取り込む酸素量も増えるため、心肺機能も上がります。心肺機能がアップすると身体活動量が増え、生活習慣病の予防にも効果が期待できますよ」
大股の速足で歩くことで脳の血管が拡張して血の巡りが良くなり、ひいてはそれが認知症予防になるという話もある。
ウオーキング時の正しいフォームと、番外編ともいえる歩き方を教えてもらった。
「腕はしっかりと振ってください。腕を振ると、下半身が自動的にねじれるので、足が前に出やすくなりますよ。また、たまには後ろ向きに歩いてみるのもいいですね。人間が前に進むためには、体を押す役割をする腿の後ろの筋肉の動きも大切になってくる。後ろ向き歩きをすることで、腿後ろの筋肉を効果的に鍛えることができます」
後ろ向き歩きをするときには、危険じゃない場所を選び、後ろに障害物などがないことを確認してから行いたい。
ぶらぶらと楽しむウインドウショッピングが、健康効果を上げるものに変われば一石二鳥。さらには、大股で速足、腕を振りながらのウオーキングも日常的に取り入れたい。今後はそちらも習慣化させようと心に誓った。
(取材・文=和田真知子/日刊ゲンダイ)
▽三田貴史(みた・たかし) SyncBody(シンクボディ)代表。米の大学でスポーツ医療を学び、米医療国家資格のアスレチックトレーナーを取得。スポーツ選手の指導、パーソナルトレーニングの指導、医療機関でのリハビリ指導などを行う。
「死ぬまで元気」を目指す