専門医が教える パンツの中の秘密

おしっこしたのにすぐにしたくなる「二段排尿」の原因は?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 トイレで出したばかりなのに、再び尿意を感じて排尿することを「二段排尿」といいます。原因には、いくつかの病気が考えられますが、成人男性で最も多く関係するのは「前立腺肥大症」でしょう。

 前立腺の肥大は症状がなくても、検査をすると40代で2割、50代で約3割、60代以上で約4割に見られるとされます。前立腺肥大症は、肥大した前立腺が尿道を圧迫して膀胱にたまった尿が出にくくなるので、症状のひとつとして「頻尿」が起こります。

 二段排尿も頻尿といえますが、本来1回に出す尿を2回に分けて出すところが、前立腺肥大症が直接引き起こす頻尿とは違います。前立腺肥大症になると尿が出にくくなるので、排尿しても膀胱に尿が残ってしまい、あらためてためられる尿量が少ないので頻尿になります。

 また、少しの刺激で膀胱が勝手に収縮する「過活動膀胱」も合併しやすくなります。

 一方、二段排尿がある場合に疑われる病気のひとつに「膀胱憩室」があります。「憩室」とは、臓器の組織の一部が風船のようにプックリ膨れる(袋状になる)状態を言います。大腸の壁の一部が外側に向かって飛び出す「大腸憩室」もよく知られています。

 尿は腎臓で作られ、腎臓の中心部の「腎盂(じんう)」から「尿管」を通って膀胱にためられます。この尿路のどこかの壁の一部が弱くなって、尿の圧力によって袋状に突出した状態が「尿路憩室」です。膀胱憩室はそのひとつで、筋肉でできた膀胱の一部が外側に向けて袋状に突出した状態です。

 この膀胱憩室ができる原因となるのが前立腺肥大症なのです。ほかにも「神経因性膀胱」「尿道狭窄」なども原因になります。

 つまり尿の流れがスムーズにいかなくなる尿路疾患があると、膀胱内の圧が上昇して憩室ができるのです。

 では、なぜ2回立て続けに尿意が起こるのでしょうか。時間が経つと尿は膀胱の正常な部分だけでなく、憩室の袋にもたまります。1回目の尿意で排尿すると膀胱が空になります。すると膀胱内が低圧になり、今度は憩室にたまっている尿が膀胱に流入して、またすぐに尿意を感じて2回目の排尿となるのです。

 憩室があると余計な部分に尿がたまるので、膀胱炎、結石、憩室炎などの合併症が起こりやすくなります。

 また、膀胱がんの発生率も高くなります。合併症を起こすようなら、膀胱鏡(内視鏡)による電気凝固で治療した方がいいでしょう。

尾上泰彦

尾上泰彦

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

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