Dr.中川 がんサバイバーの知恵

4000人は早期発見できず がん検診中止した人がやるべき対策

かかりつけ医にも相談を
かかりつけ医にも相談を(C)PIXTA

「Go To キャンペーン」の広がりで、街の活気が少しずつ戻ってきたように思います。お酒を飲んだり、旅行したりするのが好きなので何よりですが、そんな中、気になるニュースが報じられました。

 新型コロナウイルスの影響で、がん患者のうち2割が通院予定を延期したり、中止したりしていたというのです。医療関連の調査会社「メディリード」などは、全国のがん患者を対象に新型コロナの影響をアンケート調査。245人の回答を分析しています。

 それによると、通院の延期や中止をした人が20%。気になる体調の変化がありながら受診を控えた人が10%もいたといいます。受診をためらうのは、不安が影響しているようです。治療による免疫力の低下で感染や重症化のリスクが高まることを不安に感じた人は7割に上っていますから。

 緊急事態宣言の最中の4月、5月は、がん検診も多くが中止。宣言の解除を受けて再開されたものの、6月の受診率は対前年同月比で7割減。夏を過ぎて受診率は回復してきたとはいえ、通年での受診率は3割減と推測されます。

 その影響は、どうなるかというと、早期のがん発見数が4000人も減少。目に見えないがん細胞が1センチの大きさになるまで10~20年かかりますが、1センチから2センチになるのはわずか1年です。早期で発見できなかった人たちは、次に検診を受けたとき、進行がんとして発見されるリスクがあるため、助かる命をみすみす失いかねません。

 検診を受けなかった人は、すぐに手を打つ必要があります。通常、がん検診は1~3月が閑散期で、中止した人はこのタイミングで検診を予約すべきです。検診施設は十分に感染対策を行っているので、調査で浮き彫りになったような不安は解消されます。

 目下、受診を延期した人の予約が殺到。今月、来月も混み始めています。1~3月の予約も難しければ、せめて来年の4~5月に。とにかく早いうちの受診をお勧めします。

 私は、毎年春に東大病院で大腸内視鏡検査を受けていましたが、今年は不可に。それで、別のクリニックに変更して受診しました。いつもと違う病院で予約を取るのもアリです。新規の施設が上手な検査で説明が丁寧なら、来年以降もそちらを継続して構いません。私もクリニックでの受診を続けます。

 今年、受診した人も、すべての検査を受けられたわけではないはずです。たとえば、飛沫感染のリスクから、肺がんを見つける喀痰細胞診や胃・大腸の内視鏡などは、検診メニューから外し、今も再開していないところもあります。

 企業検診でそれらを受けられなかったら、自治体検診で受けるのも一つでしょう。あるいは、かかりつけ医に相談して、そこでCTなどを受ける手もあります。医療機関は今年の赤字が重く、背に腹は代えられません。症状をうまく伝えれば、保険で積極的に検査を行う姿勢になっていますから。

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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