AIが築くクスリの未来

医療現場でもデジタル化や自動化が続々と広まっている

写真はイメージ
写真はイメージ

 最近、「想像して、機械学習で睡眠をコントロールできる未来を……もうできるよ」という、スマートウオッチのテレビCMが流れています。これは、まさに人工知能(AI)が社会実装されつつある象徴的な事例のように感じます。「AIが使われるのは未来の話」「リアリティーがない」などと捉えられていたのはもう過去のこと。すでにAIの社会への浸透は始まっているのです。

 医療業界も例外ではなく、医療における情報通信技術やロボティクス、AIの浸透も徐々に進んでいます。わかりやすく言えば、これまで紙で管理していたものがパソコンで管理されるようになったり、手作業で行っていたものを自動で行うようになったりといった、デジタル化や自動化が広まりつつあるということです。

 たとえば、カルテの入力や処方箋の発行をパソコンで行うといった基本的なことから、少し進んだところで言えば、電子お薬手帳がデジタル化の一例です。これからは、こうしたデジタル化や自動化がさらにどんどん進みます。その先には、収集されたデータを基に、より安全性を高めたり、個別化が進む時代が間違いなくやってきます。

 この技術の進歩は今後も驚異的に進んでいくことが予想されます。ただそれに伴って、デジタルセキュリティーを高めることや、倫理的配慮、法令の改変や整備も、技術の躍進に合わせて議論し、整備しなくてはなりません。とりわけ、個人情報に対する考え方や、情報の取り扱いに関する考え方が“厳格すぎる”というべきか、規制が多すぎる日本は、情報通信技術の発展や社会浸透が他の先進国と比較して完全に後れを取っているのが現状です。

 今後、議論が深まり、法令の整備や規制緩和が行われ、情報通信技術が国際レベルに発展してほしいものです。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

関連記事