今から54年前の1966年、6月29日未明にビートルズは来日しました。彼らの宿泊先は、東京ヒルトンホテル(現・ザ・キャピトル東急ホテル)で、7月2日まで滞在していますが、その間、彼らはどのような食事をしていたのでしょうか。
「ビートルズ大学」(宮永正隆著、アスペクト)に、その一部が記されているので、抜粋して紹介すると――。
テーブル上にはヒレ肉(シャトーブリアン)が置かれ、ビートルズのいるプレジデントスイート(1005号室)で切り分けたとされています。
テーブルにはステーキ用のソースとして、銀の瓶に入ったマッシュルームソースとベアルネーズソース(フランス風ステーキソース)が置かれています。シュリンプカクテル用にはカクテルソースとマヨネーズが置かれていたそうです。
ご存じの方も多いでしょうが、来日当日の6月29日の夜、ビートルズの部屋を加山雄三が東芝レコードのビートルズ担当ディレクター、高嶋弘之らとともに訪れています。
加山は発売したばかりの彼のアルバム「ハワイの休日」を持参、メンバーに渡したところ、彼らはすぐに持ち込んでいたレコードプレーヤーで聴いたそうです。
当時のイギリスでは、「ハワイの休日」に収録されている「お嫁においで」「白い浜」「君の瞳の蒼空」といったリゾートタイプの曲は珍しく、このサウンドの意外性に少し驚いたのではないでしょうか。加山は著書「若大将の履歴書」(日本経済新聞出版)の中で、ポールが「日本の曲っぽくないね」と話していた、と記しています。ビートルズの部屋には日本の民謡レコードが置かれていたそうなので、彼らの耳にはそれらとは違って聞こえたのでしょう。
その夜、加山はビートルズと一緒にスキヤキを食べながら歓談します。ジョンは箸の使い方を知っていて、「床にこうして座って食べるのが正式だろ」と、テーブルから首だけ出して食べようとしたそうです。このときジョージはすでに菜食主義の洗礼を受けていたので、肉類はあまり口にしなかったかもしれませんが、詳細は不明です。
ビートルズの食生活から学ぶ健康
66年初来日の滞在ホテルで加山雄三とスキヤキパーティー
売れ始めるにつれステーキやワインを
加山は、2017年にポールが来日した際に再会を果たしていますが、ポールは、加山のことを覚えていると発言しており、ビートルズのメンバーにとって印象深いひとときだったのでしょう。
デビュー前のビートルズの食事は、フィッシュ&チップスに代表されるようなものでしたが、売れ始めるにつれて、ステーキやワインなどをたしなむようになり、平均的な英国人の食事以上の内容に変わりました。日本人がイメージする肉類・乳製品中心のいわゆる欧米食です。このような食事を取り続ければ、次第にメタボリック症候群への道をたどるリスクが高まります。
若かりし頃、スマートでカッコよかったアイドルやロックスターがその後見る影もないほどの肥満になってしまった例は、いくらでもあります。
ポップスターは、スリムとはいかなくとも、ちょっと肉づきがよい程度でいてくれてほしいものです。音楽人生だけでなく、人生自体を縮めてしまいかねません。
ちなみに、加山は今年8月、誤嚥による嘔吐で救急搬送され、軽度の小脳内出血が判明。約2カ月の入院ののち退院しました。食生活を見直し、体重を6~7キロ落とし、リハビリに余念がないようです。私も一ファンとして復活を祈っています。=敬称略