性器に先のとがった小さなイボがたくさんできる性感染症として「尖圭(せんけい)コンジローマ」がよく知られています。原因の病原体は「ヒトパピローマウイルス(HPV)」です。人の体にできるウイルス性のイボは、すべてこのウイルスが原因です。
性交によるHPV感染症は一方で、女性の「子宮頚がん」の原因になることも知られています。他にも「中咽頭がん」「肛門がん」「陰茎がん」などの原因にもなります。HPVには180種類以上の「遺伝子型」があり、その型によって良性腫瘍(イボ)の原因になったり、悪性腫瘍(がん)の原因になるのです。
がんの発生と関係があるHPVは「ハイリスクHPV」と呼び、子宮頚がんの原因は主に「16型」と「18型」です。良性腫瘍を発生させるHPVは「ローリスクHPV」と呼び、尖圭コンジローマの原因は主に「6型」と「11型」です。
女性では80%以上、男性では90%以上が生涯で一度は何らかのHPVに感染するといわれます。また、ハイリスクHPVには女性の50%が感染するといわれます。ただし、HPVに感染してもほとんどの人は自己免疫力でウイルスを排除するので病気を発症することはありません。女性では、ハイリスクHPVに感染した10%が持続感染し、そのごく一部が子宮頚がんを発症します。
それでも、国内の子宮頚がんの罹患(りかん)者は年間約1万人、毎年約2800人が亡くなっています。患者さんは20代から増え始め、30代までにがんの治療で子宮を失う人も毎年約1200人います。
そこで日本では、2009年12月にHPVワクチンが承認され、定期接種(3回接種、公費負担)が始まりました。対象者は小学6年~高校1年相当の女子です。
これまで国内で承認されているワクチンは、16型と18型の2つの型に対応した「2価ワクチン」と、さらに尖圭コンジローマの原因となる6型と11型を加えた「4価ワクチン」です。
それが今年7月に、新たに「9価ワクチン」が承認されました。2価と4価ワクチンは子宮頚がんの原因の約65%をカバーしますが、9価ワクチンは約90%を防ぐとされています。
ただし、HPVワクチンは接種後に運動障害や持続的な疼痛(とうつう)など「多様な症状」の発現が報告されたことにより、「積極的な推奨」はされていません。子供への接種を検討する際には、医師にメリットとデメリットの説明を十分に聞く必要があります。
また、成人女性や男性も自費になりますが、ワクチン接種をすることでまだ感染していない型のHPV感染を予防することができます。
専門医が教える パンツの中の秘密