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必要睡眠時間は6時間…中高年が8時間寝てはいけない理由

良い睡眠は「時間より質」
良い睡眠は「時間より質」

 記者は50代に入ってからというもの、8時間睡眠ができなくなった。それより短い時間で目が覚めてしまう。体調はすこぶる良好なので問題はないと思うが、それでも “良い睡眠=8時間睡眠”説が頭にチラついてしまう。

「8時間睡眠説は不眠症治療の大きな妨げです。特に中年以降の場合、必要睡眠時間は6時間から6時間半と言われており、それ以上は寝ようと思っても眠れない人が大多数です。年齢を重ねれば重ねるほど、日々消費するエネルギー量が下がってくるので、睡眠時間も短くて大丈夫なように体が対応していくのです」と話すのは国際医療福祉大学熱海病院検査部・〆谷直人部長。

 年齢に関係なく、長時間眠ることが“良い睡眠”であると考える人は多いが、実はそうではない。ポイントは「短時間であっても、いかに深い眠りを取れたか」。すなわち良い睡眠は「時間より質」なのだ。

 では短い時間でも「ぐっすり寝た」と満足できるような、質の高い睡眠を確保するにはどんな方法があるのか。

 簡単なのは、部屋を真っ暗にして眠ること。人は目に刺激が入ってこないだけでリラックスモードになり、眠りが深くなる。また、就寝前に、激しすぎない“適度な運動”を行うのも、良い睡眠を作り出す。

「運動前のストレッチとは違い、あくまでもリラックス目的のストレッチです。関節(手、足、股)を緩めて血流を良くすると、安眠に効果がありますよ。仰向けに横たわって大きく伸びをするだけでもいいです」と〆谷部長。

 そのほか、ホットミルクやホットココアを飲んで、カラダを温めるのも質のいい眠りへの近道。ココアにはリラックス効果があるテオブロミンという物質が含まれており、ストレス軽減も期待できる。カフェイン入りの飲み物は避ける。アルコールは興奮剤であり、眠りの質をかなり落とすので「寝酒をすれば眠れる」は間違いだ。

 また、〆谷部長は「睡眠薬は一度飲めば止められなくなる」「眠剤はだんだん効かなくなる」「怖い副作用がある」などの、睡眠薬に対する多くの誤解に対して苦言を呈する。

「これらはすべて間違いです。むろん、睡眠薬を服用せずに生活習慣の改善や睡眠方法の変更で良い睡眠を得られるのが一番。しかし、不眠治療で睡眠薬を飲み始めても止めることはできますし、同じ薬で何年間もぐっすり眠っていられる方もいます。副作用で命に関わるようなことはありません」

 加齢とともに体内時計も変化し、自然と早寝早起きになっていく。記者のように少ない睡眠時間で満足する人も多いだろう。それは人として自然なことのようだ。早朝に目が覚めてしまったら、また眠ろうと焦ったりせずに、起床して朝の時間の有意義な過ごし方を考えてみるのもいいかもしれない。

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