AIが築くクスリの未来

AIの活用で患者とのコミュニケーションが取りやすくなる

コミュニケーションの方法は技術によって大きく進化している
コミュニケーションの方法は技術によって大きく進化している(提供写真)

 情報通信技術(ICT)で情報を収集・管理し、人工知能(AI)によって分析して使えるようになる――。どんな業種においても、そのような社会が必ずやってきます。

 これらの技術は開発することが目的ではなく、あくまで手段(方法)として使うべきものです。そう考えると「AIで仕事がなくなるかもしれない」という議論はまったく意味がありません。

 議論すべきは「その仕事は何を目的としたもので、どのように社会が必要としているのか」を本質的にとらえることです。そのうえでICTやAIを「仕事を効率化し、生産性を上げるための手段(方法)」として用いるべきなのです。

 デジタル化の発展によって、コミュニケーションが希薄になるといった意見もありますが、決してそんなことはないと思います。むしろ、ICTやAIを活用することでコミュニケーションは、より密になるということも十分に考えられます。 たとえば、コロナ禍において在宅でのリモートワークが増え、移動が減った分、家族とのコミュニケーションが増えたことを実感している人は多いのではないでしょうか。

 また、移動に加えて会議室の予約などの手続きがなくなったことで、会議や商談が増えたという方もいるでしょう。

 コミュニケーションの方法は、言語ができ、文字ができ、手紙、メール、SNSができるようになった――といったように技術によって大きく進化しています。また、その速度は近年、大幅に向上しています。ICTやAIのさらなる発展によって、医療においても治療の精度や効率の向上だけでなく、患者と医療者、医療者と医療者がコミュニケーションを取りやすくなります。

 人と人とのつながりを強めることで、医療の本質である「よりよく生きるためのサポート」を提供しやすい社会になっていくことを期待しています。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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