CDC(米疾病対策センター)が昨年末に発表した2019年のアメリカ人の平均寿命は78・8歳で、その前の年に比べ0・1年上昇しました。ここ数年、オピオイド系麻薬の過剰摂取死により寿命が縮まる傾向にあったのに比べ、わずかながら久々のリバウンドとなりました。
ところが、コロナ禍の今年はそれを帳消しにするどころか、第2次世界大戦以来の最大の下げ幅になることが予想され、新年早々アメリカ人にショックを与えています。
現在までに分かっているのは昨年8月までのデータによる試算で「マイナス1年半」という数字が出ています。これが最終的には2~3年のマイナスになると予想されていて、第2次世界大戦中だった1943年の「マイナス2・9年」以降、最大の下げ幅となりそうです。
ちなみにスペイン風邪が猛威を振るった1918年には、平均寿命は11・8年も下がってアメリカ史上最悪の記録となりました。これはコロナに比べて子供の死者が多かったためで、平均寿命に大きな影響を与えたとのことです。
では、コロナの影響を考えてみると、まずアメリカ人の2019年の死因のトップは心臓病で66万人、2位ががんで60万人、3位がドラッグの過剰摂取なども含む事故死で17万3000人でした。2020年はコロナ死者が32万人を超えていますから、死因の3位になることは確実とみられています。
気になるのは、コロナ禍がドラッグ過剰摂取死にも影響を与えている点です。ソーシャルディスタンスや外出制限などで孤独になりがちな今、特に依存症から抜け出そうと闘っている人たちにとって、メンタル面だけでなく実際の治療の機会が減るという意味でもマイナスになっています。
また、2020年は例年に比べ死者の数が40万人も多くなるとみられていますが、その中にはコロナの影響による自殺や、感染を恐れて治療や検査を受けられないために増えるがんによる死亡なども含まれると考えられています。
とりわけメンタル面の対策は2021年の大きな課題となりそうです。
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