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筋肉<下>インターバル速歩で誰でも何歳からでも10歳若返る

通勤や休み時間を利用しても
通勤や休み時間を利用しても(C)日刊ゲンダイ

 海外の共同生活をしている65歳以上の男女3万人以上を最長21年にわたり追跡した研究で、「歩く速度が速い人ほど生存率が高く、遅い人ほど生存率が低い」という結果が報告(2011年)されている。

 このような研究結果は数多く報告されており、全身の筋肉の60%が集中する下半身(太もも、お尻、ふくらはぎ)の筋肉量が多いほど、健康で長生きできることを示している。しかし、体の筋肉量は20代をピークに10年で約10%ずつ減っていく。重要なのは、下半身の筋肉を増やす運動習慣を継続することだ。

 そこで信州大学医学部の研究グループが提唱しているのが「インターバル速歩」。やり方は、「ややきつい速歩き」と「ゆっくり歩き」を3分間ずつ交互に、1日30分行う。毎日ではなく、週4日(週120分)でいい。5カ月続けると、誰でも、何歳からでも、平均10歳分の体力を取り戻せる(10歳若返る)ことが、約8700人のデータで実証されている。

 考案者である信州大学医学部の能勢博特任教授(NPO法人熟年体育大学リサーチセンター副理事)が言う。

「速歩き3分、ゆっくり歩き3分、1日30分、といった時間はあくまで基準なので厳密に守る必要はありません。私たちの研究の中で、1週間のうちに合計で『120分以上のインターバル速歩』ができれば、確実に効果が出ることが実証されています。3分の速歩きがきつければ、1~2分から慣らしていって『週合計60分の速歩き』を目指せばいいのです。一番大切なことは継続です」

 たとえば、平日は仕事で忙しければ「土・日に1時間ずつ歩く」、通勤や休み時間を使いたい場合は「10分間を1日3回(朝、昼、晩)、週4日行う」、1週間に1日で済ませたければ「2時間歩く」といった具合に、自分のスケジュールや体力に合わせて時間配分を変えればいいのだ。

 きちんと効果を出すためには、次の2つのポイントのメリハリをつけることを意識して歩く。

①速歩きのときは「ややきついペース」で、ゆっくり歩きのときは「リラックスして」歩くこと。

②速歩きのときは大股でゆっくり歩きのときは普通の歩幅で歩くこと。

 速歩きの「ややきついペース」とは、歩いていて息が上がってくる速度で、そのまま歩いていると汗ばんでくるくらいのペースと思えばいい。速歩きのときの大股で歩くためのコツは次のようなことだ。

●背筋をまっすぐ伸ばす

●25メートル先を見て歩く

●肘を90度程度に曲げ、腕を大きく振る

●かかとから着地する

 ゆっくり歩きのときは上がった息を整えるリフレッシュタイムなので、歩き方を意識しすぎないのが重要。背筋を伸ばして、普通の歩幅で、リラックスして歩けばいい。

■終了後は牛乳を飲むと効果倍増

 インターバル速歩に最も適している時間帯は、午後4~5時ごろ。朝から体を十分動かしているので、エネルギー代謝や心肺機能の活動が活発になっているからだ。それに筋肉が一番ほぐれているので体の故障が起きにくい。朝行うのも体温を一気に上げて、日中の活動をアップさせるが、筋肉が硬直しているので必ずストレッチをしてから行うようにしよう。

「雨の日や体調があまり良くなく、外に出ない方がいいと思ったら、無理せず、室内で『足踏み』でインターバル速歩をやればいいのです。速歩きのときは、腕を直角に曲げて大きく前後に振り、太ももを大きく上げるようにしてください。また、膝痛の人は温水プールでの水中インターバル速歩がお勧めです」

 水中で行う場合は、速歩きのときは大股で歩くが、かかとからの着地は意識しなくていい。腰が反り返らないよう少し前姿勢で、手で前後に水をかきながら歩く。「浮力」と「抵抗・水圧」のおかげで、体重の負担は陸上の10分の1程度になる一方で、陸上の約2倍の運動効果が得られるという。

 このようなインターバル速歩を運動習慣にした上で、さらに筋肉を倍増させる方法がある。それは、インターバル速歩の終了後1時間以内に、コップ1杯(200ミリリットル)程度の牛乳を飲むことだ。

「ややきつい運動直後から1時間くらいは、タンパク質や糖質が効率よく筋肉に吸収されていきます。そこでタンパク質と糖質を併せもつ牛乳を飲むと、筋肉は盛んにアミノ酸を取り込み、いままでより強い筋肉に再生しようとする『超回復力』が作動するのです」

 牛乳が苦手な人は、乳タンパク質が取れるチーズなどの乳製品と、糖分が取れるクッキーなどの甘い物を食べるといい。

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