科学が証明!ストレス解消法

いたずら書きしながら作業すれば集中力が高まり記憶力が増す

リモート中のいたずら書きは集中力を向上させる.
リモート中のいたずら書きは集中力を向上させる.

 リモートで打ち合わせをしているとき、手を動かしていないと不安になる――。最近、友人と話をしていた際、そんなことを相談されました。確かに、手持ちぶさたになると落ち着きません。一方で、リモートとはいえ、相手の表情を見ている手前、手を動かしたりすることは失礼なのではないかと気にしてしまう……。そうは分かっていても、やっぱり手を動かしてしまう。

 これは電話で話をする際にも言えることで、わけもなくいたずら書きをしてしまう人は少なくないのではないでしょうか? 会話が終わって、ノートを見ると何の模様か分からない幾何学的な図形を描いていたり、ナゾの文字が書かれていたりする。「手持ちぶさたに耐えられず、こんないたずら書きを書いてしまう自分は大丈夫か?」なんて思ってしまうかもしれませんが、実は「いたずら書きをしながらの作業の方が記憶力が高くなる」という英国のプリマス大学の研究があります。いたずら書きはすごいんです。

 被験者は、18~55歳の男女40人。録音テープを聞いてもらい記憶力をチェックしました。その際、落書きのように図形をなぞりながら聞いてもらうグループと、何もせずに黙々と聞いてもらうグループに分けたところ、前者の方が30%ほど録音テープの内容を覚えていたことが明らかになったのです。むしろ退屈だからこそ、注意力が散漫してしまう可能性が示唆されました。

 脳は、一定限度の量の注意力しか備わっていないといわれています。それを使い切ってしまうと、他の刺激による情報の処理が停止してしまう。こういった脳の働きを「認知負荷理論」と呼びます。例えるなら、何か高い買い物をして予算を使ってしまうと、他のものが買えなくなってしまうような感じでしょうか。

 実験を主導したアンドレイド氏は、「いたずら書きは、小さな認知的負荷しかかからない。それでいて、集中力を向上させる」と話しています。つまり、いたずら書きは費用対効果のいい、脳の集中力の使い方なのです。

 集中して会議や打ち合わせを聞き続けていると、一気に集中力を消費してしまう。ところが、いたずら書きや落書きをすると、集中力の消費スピードにブレーキがかかるような効果がある。上手に力を逃がす術でもありますから、感電を防止する“アース線”のような効力がある。さらには、手を動かすことは脳の活性化にもつながりますから、いたずら書きはとても有効的な手持ちぶさた解消法でもあります。ただし、話をしている方は、そんな効力があるとは知らない可能性が高いですから、「あいつ、話を聞いていないな」と思われない程度にとどめておくように。

 脳は無意識下だと、複数のことを並行して処理することが得意です。半面、意識している状態では、並行処理が苦手になる。そうすると集中力が落ちてしまう。無意識下で発動するいたずら書きは、作業効率を向上させる力があるのですから、手を動かしていないと不安になる人は、いたずら書きを取り入れてみてはいかがでしょうか?


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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