死亡事故につながる熱中症は冬でも起こる…長風呂にリスク

写真はイメージ
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「熱中症」というと、暑い夏の病気だとイメージする人がほとんどだろう。しかし、それは大きな勘違い。寒い冬でも熱中症を起こし、亡くなる人が少なくないという。大きな原因は「長風呂」にある。

 熱中症とは、気温と湿度が高い環境下で、体内の水分や塩分が失われたり、体温の調節機能が利かなくなることで体温が上昇し、めまい、けいれん、頭痛、嘔吐、意識消失といった症状が表れる病態を指す。夏は気温と湿度が高いため、発汗を適切にコントロールできなくなって体温を下げることができず、熱中症を起こす危険が高くなる。

 一方、冬は気温も湿度も低いので屋外での熱中症リスクは低い。しかし、問題となるのが入浴時の熱中症だという。東京疲労・睡眠クリニック院長の梶本修身氏は言う。

「風呂は、長時間、熱い湯につかることで深部体温が上昇します。さらに、浴室内も高温多湿になるため鼻から吸う空気で脳を冷やすことができず、体温制御機能が低下して熱中症リスクを高めます。入浴中に体温が40度を超えると熱中症の症状が表れ、そのまま入浴を続けていると意識障害を起こし事故につながる危険がアップします」

 41度の風呂に15分間入浴すると、約800ミリリットルの水分が失われる。体が脱水状態になるとさらに深部体温が上昇しやすくなり、熱中症が重症化する。

 慶応大の研究によると、体温37度前後の健康な人が42度で全身浴した場合、30分足らずで体温が40度に到達することが報告されている。

 寒い冬は、夏よりも熱い湯にじっくり長い時間つかるという人も多い。しかも、気温の低い外気が入ってこないように窓を閉め、換気も不十分になりがちだ。その結果、体温だけでなく脳温度も上昇し、体温制御機能が低下することで熱中症をさらに招きやすくなる。

「とりわけ注意すべきは高齢者です。高齢になると自律神経の働きが衰えて体温の調節機能が落ちます。さらに、高齢者はお湯の熱さや『のぼせた』という感覚も感じにくい。のぼせたなと感じる前の段階で風呂から上がれば熱中症は避けられますが、自覚しないまま長風呂をして熱中症で倒れていたというケースが増えるのです。また、女性は冷え性の緩和やダイエット目的で長湯する人が多い。さらに、最近はスマートフォンをいじりながら長風呂をする若年層が増えていて気付かないうちに長時間、熱い湯につかってしまい、熱中症を起こすケースが頻発しています」(梶本氏)

■40度以下のお湯に10分まで

 冬の風呂というと「ヒートショック」がよく知られている。入浴前後の急激な温度変化によって、血圧が大幅に上下動して心血管疾患などを引き起こし、死に至るアクシデントだ。

「これまで、入浴時の事故は浴室や更衣室の冷えと寒さが原因で心筋梗塞を起こすとされてきました。しかし、最近の研究で入浴中に意識を失い救急搬送された患者において心筋梗塞は1%以下だったことがわかりました。もちろんヒートショックへの注意は必要ですが、事故の90%近くは長時間の入浴による熱中症であることが示されています。冬の風呂で熱中症を起こさないためには、浴槽に張るお湯の温度を40度以下に設定し、お湯につかる時間は長くても10分までにとどめるようにしましょう」(梶本氏)

 寒いからこそ熱中症に注意すべし。

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