最期は自宅で迎えたい 知っておきたいこと

認知症でも独り暮らしでも在宅で最期まで問題なく過ごせる

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 さまざまな病気に対処できる在宅医療ですが、意外に知られていないのが認知症にも対応できるということです。私たちの診療所では、認知症は末期がんの次によく看ている病気です。

「認知症」といってもさまざまで、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症など種類によって症状が違いますし、進行具合でも必要とされるケアが変わってきます。

 私たち在宅医療チームはその都度、鎮静剤を含めた薬を使用したり、適切な看護や介護のサービスを追加するようにします。

 そうして安定した状態をできるだけ長く続かせ、ご家族の負担も軽減させます。困った時だけ頼る病院の外来と違い、私たちは定期的に訪問し、日々の悩みに寄り添っていきます。

 もちろん希望があれば、デイサービスや、時には介護保険を使ったショートステイなど病院で患者さんを短期間お預かりする医療保険のサービス「レスパイト入院」を提案することもあります。

 読者の中には、「認知症で独り暮らしは、さすがに在宅医療は無理では?」と思う方がいるかもしれません。独り暮らしでも問題なく、在宅医療を受けられます。

 その患者さんは、兄弟はすでに亡くなっており、甥や姪らとは連絡が取れない状態。生活保護を受けながら独居を余儀なくされている82歳の男性の方でした。

 過去に心筋梗塞を経験していたのでその治療で通院しており、脊柱管狭窄症も抱えていましたが、認知症のために内服薬の自己管理ができず、たびたび腰の痛さに耐えかねて夜中や早朝に救急車を呼ぶなどされていました。

 在宅医療は最初、週1回の訪問からスタート。その後、患者さんの状態に合わせて訪問回数を少しずつ増加していきましたが、患者さんの症状は悪化していき、ますます服薬がままならなくなっていきました。

 そのうち介護認定を申請し、訪問介護も追加。さらに訪問看護の回数を増やし、清潔保持のための体の清拭や排泄介助などを1日2回行ったり、内服管理と歩行訓練、状態観察を毎日1回実施することになりました。これにより事実上、訪問看護とヘルパーさんなどの人の目が1日に3回入ることになり、救急車を呼ぶことはなくなりました。

 時には訪問看護を医療保険で利用することも。日々変化していく患者さんの状況は、人が入る時にバイタルチェックを行って確認していきました。状態に応じて、点滴や服薬などで対処。約2カ月間、最期まで自宅で過ごされ、私たちの見守る中、旅立たれていきました。

 2025年には団塊の世代がすべて後期高齢者となります。そうなると5人に1人が認知症になるといわれています。

 将来もしあなたが、あるいはあなたの大切な人が認知症になった時のために、在宅医療で看ることを選択肢として考えてみてはいかがでしょうか。

下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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