科学が証明!ストレス解消法

コロナ禍で生産性をより高めるために必要な3つの条件

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 組織の中で仕事をする以上、個人プレーはなかなか許されません。ところがコロナ以降、多くの企業でテレワークが始まり、同じ空間の中で仕事をする機会は減少。今では「自宅で仕事をする」「個人で進められる仕事の範囲が広がる」など、個人プレー的な取り組み方へとスライドしている人は増えているのではないでしょうか。

 一方で、全体をチェックしなければいけない中間管理職は、部下や同僚が“見えない”ため、ストレスを抱えやすくなっていると思われます。以前であれば、その場で確認やコミュニケーションを取れたはずが、テレワークへの移行で細かいズレが生じやすくなる――。実際、そういった悩みが増えていると耳にします。

 考えようによっては、働き方の幅が広がり、より仕事へのアプローチが多様的になったとも言えます。いろいろな働き方があったほうが生産性も高まるのではないか? しかし、単に多様化するだけでは、均一な集団と大差がないことを示した研究があるのです。「多様な集団が上手に機能するためには、一定の“厳しい条件”が必要である」という米ミシガン大学・オリベイラとニスベットの研究(2018年)です。

 では、その条件とは何か。主に3つの要素が求められています。まず、「(社会的・性格的などの)属性の違いによって考え方が異なることが確立されている」。端的に言えば、自分と同じような考え方の人ばかりなのは望ましくない。

 2つ目が、前述の延長線上とも言えますが、「その差異が大きいほど望ましい。なおかつ、単体ではなくグループ単位と呼べるような規模感に差異があったほうがいい」。一歩間違えれば“混ぜるな危険”になりかねませんが、その点を踏まえ、最後に「その中でお互いが中間にあるものを発見できるか」が必要とのことです。

 これらを満たしたとき、組織や集団は新たな扉を開けるというのです。くしくも、テレワークなどコロナ禍の新しい働き方は、3つの要素を満たしていると言えるでしょう。

 日本には、「三人寄れば文殊の知恵」という素晴らしい慣用句がありますが、気の合う友達を3人集めても、話が盛り上がるだけで終わってしまいかねない。だったら、タイプの異なる人を集めたほうがより洗練された文殊の知恵となる可能性が高い。

 この研究は、より何かを高めるなら真剣な議論は避けては通れない、と示唆している点も面白いです。ジャニーズが大好きな人たちと、韓流俳優が大好きな人たちが討論したとして、単にお互いの好きなところや嫌いなところを言い合っても生産的ではないでしょう。しかし、3点目に挙げた「中間にあるものを発見する」にまで到達できれば、生産的な時間や関係性の創出につながります。

 異なる考え方の人たちと向き合う際は、真剣さと寛容さが大切です。私たちは、組織として成長するための過渡期のただ中にいます。この逆境を好機として考えられれば、きっとあなたの組織はより豊かな集団となるはずです。


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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