巣ごもりGWだからこそ知る「ピルの効能」

低用量ピルを使うとニキビが治るというのは本当なのか?

写真はイメージ
写真はイメージ

 ピルはニキビに効果があることを聞いた事がある方は多いでしょう。

 ニキビは毛穴の中に皮脂が溜まり、雑菌が増えることで起こります。男性ホルモンは皮脂を増やす作用がありニキビを悪化させますが、ピルには男性ホルモンを抑える働きがあります。塗り薬や抗菌薬の飲み薬でも治らない場合、ピルを希望して婦人科の門を叩く患者さんは少なくありません。

 ただ「女性なのに男性ホルモン?」と思いませんか。男性ホルモンは男性にだけ、女性ホルモンは女性にだけありそうです。

 しかし男性ホルモンと女性ホルモンは親戚のようなものです。女性ホルモンは体の中でコレステロールを材料にして作られますが、その途中の段階では一旦男性ホルモンができます。卵巣や脂肪細胞で男性ホルモンにアロマターゼという酵素が働くと、男性ホルモンは女性ホルモンに変換されます。

 このように男性ホルモンと女性ホルモンは切り離せないもので、女性にも男性ホルモンが存在します。男性ホルモンには筋肉を増強し、やる気や性欲をアップさせる効果もあり、女性にもいい影響を与えてくれます。しかし時にはニキビという困った問題を起こしてくるのです。

■ピルは男性ホルモンの「運び屋」を増やす

 それではピルが男性ホルモンを抑えるしくみはどのようなものでしょうか。まずピルには卵巣や副腎での男性ホルモンの産生自体を抑える作用があります。またピルには性ホルモンの運び屋であるsex hormone binding globulin(SHBG)を増やす作用があります。

 SHBGは男性ホルモンを乗せて全身に運んでくれますが、運ばれている間、男性ホルモンは機能しなくなります。ピルでSHBGが増えれば、たくさんの男性ホルモンがSHBGに乗せられ機能しなくなるので、男性ホルモンの活性は相対的に弱まるというわけです。

 最後に、男性ホルモンにもいくつか種類があり皮脂腺に直接作用する最強型があります。ピルにはこの最強型への変化を阻害する作用もあります。ピルはこのようにトリプルの作用でニキビをできにくくします。

 と、ここまでの仕組みはわかったけど、「本当に減るの?」と疑う方もいるでしょう。これは実際に調べられています。

■改善効果は6カ月以上で抗生剤と同程度

 ピルと、ピルに似せた偽薬、飲み薬の抗生剤の3つを使って効果を比べた研究があります。投与開始から3カ月ではピルは偽薬よりもニキビの改善効果を示しましたが、この時点ではまだ抗生剤の方が効果は優れていました。しかし6カ月がたつと抗生剤と同じぐらいの効き目があったと報告されています。

 ニキビでピルを始める場合、1~2カ月であまり変わらないとがっかりされる患者さんもいます。今まで他の方法を試して最後に勇気を出してピルを試していたりするので、もっともなことだと思います。ただ抗生剤と同じくらいの効果が出るまでには6カ月程度と少し時間がかかる可能性はあります。患者さんにはピル以外の方法での治療も続けながら継続されることをすすめています。=つづく

佐野靖子

佐野靖子

ミラザ新宿つるかめクリニック婦人科医師。順天堂大医学部卒。同大産婦人科入局後、非常勤助教を経て現職。医学博士、日本産婦人科学会専門医、日本女性医学学会専門医。専門は更年期障害、女性のヘルスケア。

関連記事