科学が証明!ストレス解消法

「不安」は知性の証拠 逆らわずに受け入れた方がいい

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルス感染拡大による閉塞感は、いまだ出口が見えません。新たな変異株も登場し、不安は募るばかりです。しかし、人間は変化を嫌う動物ですから、変化が起きれば当然、不安も生じます。不安を抱くことは何もおかしいことではなく、生きている証しでもあるわけですから、自信を喪失する必要はないのです。

 不安は万病のもとである――などと言われますが、実際には重要な本能です。不安や心配があるから、危険に対する準備がしやすく、日常のわずかな変化や違和感にも気が付きやすいのです。不安を必ずしも「ネガティブ」なものと捉えず、「武器」として捉え、上手に付き合っていくことも大切です。

 実際、コロナに対して不安があるから、私たちは「備えあれば憂いなし」ではないですが、自分で可能な限り対策を講じたり、感染予防に努めようとする。正しく怖がるからこそ、正しい知識や情報を取り入れようと考えるわけです。「不安が強い人ほど交通事故の死亡率が下がる」といったデータもあるほどです。

 ハーバード・ビジネス・スクールのブルックスの研究(2013年)では、「脳はリラックス状態以上に興奮状態にある方が、ポジティブな状態だ」と主張しています。ブルックスは、不安な状態からリラックスした状態に落ち着かせるよりも、不安な状態から興奮状態に移行した方がパフォーマンスが上がることを実証しています。

 もちろん、コロナそのものへの不安を興奮に置き換えるのは難しいでしょう。ですが、生活や仕事の中で抱える不安においては、ブルックスの研究は一助となるはずです。研究では、100人以上の被験者に対して、見知らぬ人の前で歌わせたり、ビデオカメラの前でスピーチをさせたり、計算問題を解かせたりといった緊張状態で行いました。

 その際、【グループ1】実験前に「興奮している!」と声に出したグループ【グループ2】実験前に「不安だ!」と声に出したグループ【グループ3】実験前に何も言わなかったグループ――という具合に3つのグループに分けて比較をしたのですが、【グループ1】の被験者は相対的に良いパフォーマンスを見せたといいます。

「落ち着こう」「自分は大丈夫だ」とリラックスさせるよりも、「この状況にワクワク(興奮)する」と自らを奮い立たせた方が効果的だと述べ、無理にプラス思考になる必要もないと、研究では提唱しています。

 先述したように、人間は不安から逃れられません。であれば、拭い去ろうとするよりも、不安を受け入れてノリノリになった方がいい。

「感情を抑制することが、より良い決断につながるというのは間違いだ」とは、リスボン大学の著名な神経学者・ダマシオの言葉です。不安な状態にあるから、状況をより客観視できる。それを抑制することは、実はとてももったいない。不安を覚えるから、あれこれ努力したり、対処方法を講じる。「不安は知性の証拠」と、覚えておいてください。


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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