科学が証明!ストレス解消法

精神的な健康のピークは82歳前後にある 米大学の研究で判明

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 年齢を重ねてくると、どうしても体力や記憶力は衰えていきます。昔は簡単にできたことができなくなり、戸惑いや不安が押し寄せ、自信を失ってしまう機会にもつながってしまいます。しかし、衰えてしまうのは自然の摂理なのですから、過度に落ち込む必要なんてありません。「しょうがないよな」と深く考えないことが大切です。しかも、ハーバード大学を含めた共同研究(2015年)によれば、「50歳を過ぎてからピークを迎える能力がある」。50歳は、まだまだ老け込むような年齢ではないんですね。

 研究は、4万8000人を超える老若男女を対象にオンライン上から集めたサンプル(アンケート回答や実施されたIQテストなど)をもとに分析しました。その結果、最も計算能力が高かったのは50歳前後の人たちで、シンプルな計算問題は年長者の方が良いパフォーマンスを残したといいます。

 一方、記憶力に関するテストでは、若い被験者に劣る結果が明らかになりました。また、情報の処理速度に関しても、20代が圧倒的に成績が良く、頭の回転に関しては若者に勝てないことが示されました。こればかりは仕方がないですよね。

 しかし、興味深いのは、「他人の感情を目を見るだけで正しく認識する能力」において、50代の成績が最も良かった点です。亀の甲より年の功。50年も生きていれば、酸いも甘いも噛み分けていますから、他人の感情を察知する能力に秀でているのでしょう。

 この検証では、認知能力のピークが、世代によってかなり差異があることが明らかになっています。成人の早い時期に、いくつかの認知能力が安定するため、30代になると低下し始める人もいます。ただし、あくまで安定するだけであって、ピークを迎えるのではない。つまり、中には50代近くになってピークを迎える人もいる。裏を返せば、30代にどんな人生を送っているかがポイントになるといえるかもしれません。

 また、別の研究では、社会的対立についての推論は、老年期(60代以上)に向上する傾向があるという結果が出ています。対立する問題を分析したり、解決したりするのは、60代が得意というわけです。といっても、老害化する人もいますから、個人差があることは付記しておきます。

 昨今、老後については、さまざまな問題が叫ばれていますが、あまり悲観しない方がいいでしょう。南カリフォルニア大学のストーンらの研究(2010年)では、「精神的な健康のピークは82歳前後」という驚くべき結果があるほどです。あらゆる世代の被験者に、10段のはしごを思い浮かべてもらい、一番上の段(10段目)=最高の人生、一番下の段(1段目)=最悪の人生として、自分の人生が現在何段目に位置するかを尋ねたところ、最年長のグループ(82~85歳)が一番満足度が高く、平均して7段目と回答したそうです。

 加齢は“衰え”ではなく、“一歩先に進んでいる”。そう考えると、毎回誕生日がハッピーになると思いませんか?


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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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