病院のリハビリテーション(以下リハビリ)で使う機器には、さまざまなロボット技術が導入されている。利用する患者の多くは、脳卒中による片マヒだ。下肢マヒのリハビリには、どのような歩行訓練支援ロボットが使われているのか。リハビリ専門医で医療用ロボットに詳しい了徳寺大学・健康科学部医学教育センター(千葉県浦安市)の松元秀次教授が言う。
「現在、国内で使われている歩行訓練支援ロボットは、大きく分けて『設置型』と『装着型』があります。設置型は、歩行をアシストするロボット脚を療法士に装着してもらい、屋内に設置された平行棒の付いた専用のトレッドミルの上を歩いて訓練します。装着型は、自分でも装着できるロボット脚単体で使うウエアラブルタイプで、持ち運べるので屋外でも訓練することが可能です」
どちらかというと設置型は重症~中等症向けで、装着型はある程度回復してきた軽症~中等症向けといえる。国内で使われている設置型で代表的なものは、トヨタ自動車と藤田医科大学が共同開発した「ウェルウォーク」。2017年に医療機器に承認され、昨年にはさまざまな機能をバージョンアップさせた最新型が登場している。
コロナ禍でも注目 最新医療テクノロジー
最新の「歩行訓練支援ロボット」は楽しみながら訓練できる
ウェルウォークは、患者の体を上から吊るして歩行訓練できるので転倒する心配がない。患者が立つ正面には大型モニターが設置されており、全身、足元、横の姿勢の3方向からの映像を映し出すことができる。患者本人も自分の体の状態を把握しながら訓練することができるわけだ。
「ロボット脚は、膝から足首、足底を覆う形になっていて、膝の部分にモーターとセンサーが入っています。そして療法士がタッチパネルで、膝伸展、足の振り出し、膝屈曲角度、膝屈曲のタイミングなどのアシスト内容を調整して歩行訓練を行います。リハビリでは、このように運動学習理論に基づいて、正しい運動フォームを反復することが重要になります」
繰り返し行う歩行訓練は、モチベーションの維持も課題になる。そのため最新型にはゲーム機能も搭載されている。「姿勢ゲーム」は、調整した軸の範囲内で姿勢を維持するとポイントが獲得でき、範囲から外れるとリセットされる仕組み。「東海道五十三次ウォーク」は、リハビリ中の歩行をカウントし、五十三次の宿場を旅するゲームだ。
しかし、医療用ロボットは進化するほど高額になる。リハビリの診療報酬(医療機関に支払われる金額)だけでペイするのは難しいという。