「いわしの頭も信心から(信仰心が深いと、いわしの頭のようなつまらないものでも、尊く思えてしまうこと)」と聞くと、プラセボ(プラシーボ)効果をイメージする方もいるのではないでしょうか。
プラセボ効果とは、もともとは有効成分が含まれていない偽薬を、本物の薬だと思って患者が使用すると、出るはずのない効果が本物の薬のように出てしまう現象を指します。翻って、効果のあるはずのない条件でも、効果があると被験者に思い込ませて臨むと、実際に効果が表れてしまうことを意味します。
実際、人は思い込みの力で自分の体調を変えられるともいわれており、薬効のない鎮痛剤(偽薬)を処方され「とても効いた」と感じた患者さんは、それが偽薬だと明かされた後でも引き続き鎮痛効果を得ていたという報告もあるほどです。
人間の“思い込み力”については、さまざまな実験が行われているのですが、ケルン大学のダミッシュらの研究チームが行った実験(2010年)は、いかに思い込みが大切かを物語る範例と言えるでしょう。
彼らは、参加者全員にパターゴルフをしてもらい、半数の人だけに「あなたの打つボールはラッキーボールです」と知らせました。すると、ラッキーボールと告げられた半数の人のカップイン率は10球中平均6・75回。対して告げられなかった人たちは10球中平均4・75回でした。なんとラッキーボールと告げられた人たちの方が、カップイン率が35%もアップしたのです。
また、「ラッキー」について客観的、科学的な視点から何十年も研究しているハートフォードシャー大学のワイズマンの調査でも、自分が幸運だと信じている人ほど、新聞にさりげなく仕込まれた賞金がもらえる情報を見つけ、賞金を持ち帰る確率が高かったというデータがあります。半面、「自分は運が悪い」と思っている人は、消極的かつ非社交的な傾向が強かったそうです。
確かに、「自分は運が良い」と思っている人と、「自分は運が悪い」と思っている人とでは、日々の生活や仕事の中で豊かさに差が生まれてくるのは納得でしょう。ワイズマンは、周囲の視線も好意的なものへと変化するため、運が良いと思い込むだけで生活に変化が表れると唱えています。そして、「運とは心がけと行動次第によって向上可能なもの」といったメッセージも伝えています。
思い込み力は生活のさまざまなシーンでも応用できます。
面白い話では、お笑い芸人のダチョウ倶楽部の上島竜兵さんが、水で酔っぱらったというエピソードがあります。後輩芸人である有吉弘行さんが、上島さんがボトルキープしていた焼酎の中身を水に替えるといういたずらを仕掛けたところ、後日訪れた上島さんがその焼酎のビンに入った水で水割りを作って飲み、見事に気持ちよく酔っぱらっていたそうです。これもまた、思い込みがなせる魔法と言えるかもしれません。
「信ずるものは救われる」であり、「いわしの頭も信心から」。これらが、バカにできないほどの効力を生み出すことがあるのです。
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