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感染拡大なのに五輪続行…混乱する米国人へのメディアの説明

国立競技場前のモニュメントで記念撮影をする人たち
国立競技場前のモニュメントで記念撮影をする人たち(C)真野慎也/JMPA

 コロナ感染急拡大の中、なぜ五輪は続けられるのか? というアメリカ人の疑問に対し、その理由を説明する記事が一斉に出されています。

 ロイター通信は、五輪の“バブル”内の8割はワクチンを接種しているのに対し、日本人のワクチン接種率が3割以下と低く、またバブル内では厳しい行動制限が敷かれているが、一般人は自主規制に頼っていることを挙げています。

 ウォールストリート・ジャーナルは「五輪関係者と一般市民は“パラレルワールド”に住んでいる」というIOCスポークスパーソンのコメントを紹介。AP通信は「バーやレストランの営業短縮や酒類提供の自粛について拘束力はなく、罰せられることもほとんどない。通勤ラッシュの満員電車は変わらず、日本ではビジネスパーソンはリモートワークに移行するのが困難」と説明。繰り返される緊急事態宣言に慣れてしまい“緊急事態”がニューノーマルになっていると指摘しています。

 そしてどのメディアにも共通しているのは、政府や当局の矛盾するメッセージが事態を混乱させているという論調です。

 ロイター通信は「五輪を続けること自体が、行動制限の必要を感じさせない」という日本の複数の専門家の懸念を伝え、AP通信は「感染拡大に五輪もある意味で貢献している。メダルラッシュで盛り上がりスポーツバーで観戦したり、公式グッズを買いに出るなどの人流が増えている」としています。

 ウォールストリート・ジャーナルは「五輪を続行しても安全。なぜなら高齢者のワクチン接種が進んで死者が激減しているから」との菅首相の発言を伝え、「こうした楽観的なメッセージを広げることが、感染拡大防止を妨げている」という共同通信の論調を紹介しています。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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