病気を近づけない体のメンテナンス

足<上>「足寿命」を決めるポイントと3つの体操 国内初の足の総合病院院長が教える

写真はイメージ
写真はイメージ

 少し歩いただけで足が疲れる。階段の上り下りで足や膝が痛い。巻き爪やタコが痛む。足が冷えたりむくんだりする……。こうした足のトラブルは、意外と軽視されてしまいがち。しかし、足に生じるこれらの症状は、実は「足寿命」が短くなっているサインかもしれない。

 国内初の足の総合病院「下北沢病院」(東京都世田谷区)の菊池守院長が言う。

「足の寿命は体の他の部位よりも、早く消耗する傾向があります。人の足には歩くたびに体重の約2~3倍、走るときは約5倍もの負荷がかかります。トータルすれば毎日数百トンもの負荷を足に与えているわけです。症状があってもケアすることなく放置していると、やがて自分の足で歩くことができなくなってしまうリスクがあるのです」  足の健康は複数の要素で決まるが、特に両足にかかる体重を均等に保てる状態かどうかが重要になる。しかし、加齢によって足の筋力が弱まり、関節が硬くなると、土踏まずの部分の「アーチ」の形が崩れ、扁平足が進行する。アーチが崩れると両足にかかる体重のバランスが崩れ、力のかかり方に歪みが生じる。片足にだけ無理な負荷がかかったり、特定の部位の関節に負担を強いたりして、それが痛みや違和感のもとになるのだ。

 また、足の筋力や柔軟性が衰えると、ふくらはぎから心臓に向けて血液を戻す「ポンプ機能」がしっかり働かなくなる。

 すると、血液やリンパの流れが滞るので、冷えやむくみが起こるのだ。アキレス腱も硬くなると足にうまく力が伝わらず、歩きにくくなったり、転倒しやすくなったり、さまざまな弊害が生じる。

 では、足寿命を延ばすためにはどうしたらいいのか。

「大切なのは、①足首のやわらかさ(関節の柔軟性)②土踏まずの形(足のアーチ)③足裏の筋力、の3つです。これらは足のバランスを保つために必要不可欠な要素です。つまり、これらを鍛えれば、足の機能はどんどん回復し、足寿命を若返らせることができます」

 そこで菊池院長が勧めるのは「3つの体操」。

 まずは、この体操で足のアーチを整え、正しい歩き方ができる足をつくることから始めるといいという。やり方はこうだ。

【足首のやわらかさを取り戻す「壁ドンふくらはぎ伸ばし」】

①壁に向かって立ち、両手の肘がちょうど伸びる程度の距離を保った状態で両手を壁につく②左足を1歩下げる。つま先は真っすぐ前に向け、かかとを浮かさないのがポイント③少しずつ壁に体重をかけ、右足の膝をゆっくり曲げていき、左足のふくらはぎを伸ばす。このとき両手は少し曲げてもOK④もう片方の足も同じように行う。

 これを左右20秒ずつで、1日3セットを目安にする。

【土踏まずの形が改善する「足首サッサ」】

「足のアーチを整えるには、膝の裏側からかかとへ向かって伸びる後脛骨筋をはじめ、複数の筋肉に働きかける必要があります。そこで、この体操で足裏のアーチを形成する筋肉にアプローチします」

①椅子に浅めに腰をおろして、リラックスした状態を保つ。足は肩幅程度に軽く開く②足の裏は完全に床につける。足首はなるべく真っすぐにし、つま先を少し外側に向ける③右足のかかとと小指を床につけたまま、足首を少し倒すようにして親指側を浮かす④そのまま小指で床をサッサと掃くように、内側へこする。このとき足のアーチに力を入れ、ふくらはぎの内側の筋肉をしっかり使う感覚で行う⑤左足も同じように行う。

 これを左右10回ずつで、1日3セットを目安にする。

【足裏の筋量がアップする「足裏そらし」】

①椅子に浅めに座る。足は肩幅くらいに開き、すべての足の指を床におろす。足を出す角度は、くるぶしが膝より前にくるようにする②足のアーチを強く引き上げる感覚で、すべての足の指を大きく反らす。このとき指の間をできるだけ広げる③(2)の状態から親指だけをおろす。他の指はピントを反らし、足のアーチを引き上げたままにしておくのがポイント④足のアーチの力を抜かないまま、残りの4本の指をおろす⑤最後に、床をつかむように足のアーチに力を入れ、すべての指の付け根(MTP関節)を曲げ、ギュッとつま先を持ち上げる。

 これを左右5回ずつで、1日3セットを目安にする。

 次回は「正しい足のメンテ術」を紹介する。

関連記事