時間栄養学と旬の食材

ニシンは生より干物の方が栄養価が高い ダイエット効果も

ニシン
ニシン

 世界一臭いと言われている食べ物「シュールストレミング」という缶詰にも使われているニシン。ドリアンや納豆よりも臭い缶詰とされますが、お刺し身や干物、塩焼きで食べるニシンは香り豊かなおいしい魚です。

 国産のニシンはほとんどが北海道で取れますが、数が減ってきているためスーパーなどで見かける加工品の多くは輸入されたタイセイヨウニシンがほとんど。ニシンの卵である数の子を取るタイミングとしては産卵期の春が旬ですが、ニシン自体は今の時季に旬を迎えます。同じ青魚であるサバやサンマなどと比較すると、調理する頻度は低いかもしれませんが、栄養価が高いのでこの時季は特におすすめです。

 栄養素の中で最も注目したいのが、DHAとEPAなどのn3系多価不飽和脂肪酸の含有量。青魚に多く含まれる栄養素として知られ、DHAは脳の働きを活発にし、記憶力や学習能力向上に効果があるとされ、EPAは血液をサラサラにする働きを持っています。

 日本人の食事摂取基準(厚生労働省)でも、取って欲しい脂質とされていますし、マウスの実験では体重や皮下脂肪、内臓脂肪を減らす働き、朝食に取ることで体内時計を朝型にリセットする効果、花粉症の予防効果も報告しています。最近ではほぼ純度100%のEPAが高脂血症や閉塞性動脈硬化症の治療薬としても使われています。

 ニシン100グラムに含まれるn3系多価不飽和脂肪酸は1.7グラム。年代によって違いますが1日の摂取目安量は成人男性2.0~2.4グラム、成人女性1.6~2.0グラムとしているので、ニシンを食べることでかなりの充足率が期待できます。

 また、タンパク質をエネルギーに変える働きを持つビタミンB6を豊富に含んでいるのも特徴のひとつ。その他、ストレス耐性に関わるビタミンB2を含むビタミンB群、夜盲症や肌荒れ予防に働くビタミンA、骨粗しょう症予防にも役立つカルシウム、マグネシウム、リン、ビタミンDなどのビタミン、ミネラルが本当に豊富です。

 生のニシンより身欠きニシンなどの干物のほうが、水分が少なくなる分、同量当たりの栄養価はアップします。ご自身の目的や好みに応じてぜひ召し上がってみてはいかがでしょうか。

古谷彰子

古谷彰子

早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学准教授、アスリートフードマイスター認定講師。「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」「時間栄養学が明らかにした『食べ方』の法則」(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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