歯を白くする「ホワイトニング」は体や歯に害はないのか? 中高年男性の希望者も増加中

写真はイメージ
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 近年、健康意識の高まりから口腔ケアへの関心も強くなり、歯を白くする「ホワイトニング」が注目されている。女性だけでなく、中高年男性が施術を受けるケースも増えているという。歯へのダメージはないのか。小林歯科医院副院長の小林友貴氏に聞いた。

 ホワイトニングとは、歯を削らずに専用の薬剤を使い、さらにレーザーを当てて科学的に歯を漂白する施術だ。

 学術的に効果が認められている薬剤を使用する施術を行えるのは、歯科医師または歯科衛生士の資格を持つ者に限られるが、基本的には美容目的で「治療」には当たらないため、健康保険の対象にはならない。

 大きく2つの方法があり、歯科医院での施術は「オフィスホワイトニング」、歯科医の指導の下で本人が自宅で行う方法は「ホームホワイトニング」と呼ばれる。

 費用は全額自己負担でまちまちだが、前者は3万~7万円ほどでメンテナンスのために定期的な通院が必要になる。後者は総額2万~3万円程度が一般的だ。

「歯が着色する原因は大きく2つあります。1つ目は加齢によって歯の表面を覆っている半透明で白色のエナメル質が摩耗し、内部の黄色っぽい象牙質が透けて見えやすくなるため。2つ目はステインによる着色で、飲食物に含まれる色素がエナメル質の中に浸透して沈着することで起こります。ホワイトニングは、エナメル質の中に浸透した着色物質を、薬剤が分解されて生じるフリーラジカルで分解し、歯を白くします。着色物質は高分子構造の有機質で、高分子であるほど色が濃くなり、低分子になると色が薄くなります。フリーラジカルは、その高分子の着色物質と結合して分解し、低分子にして無色化するのです。また、薬剤から生じたフリーラジカルはエナメル質の微細構造を変化させるため、屈折率が変わって白く見えるようになります」

 ホワイトニングの薬剤には、主に過酸化水素や過酸化尿素が使われる。過酸化水素は口腔内で最終的に酸素と水に分解され、体内に入っても害はない。過酸化尿素は口腔内で尿素と過酸化水素に分解され、同じく健康に害はないという。

■知覚過敏が起こりやすくなるケースも

 では、歯に悪影響はないのか。

「ホワイトニングで使われる薬剤は、着色物質の有機質だけに作用するため、歯に対する影響はないといわれています。ただ、薬剤が歯の内部に浸透して神経に強い刺激を与え、知覚過敏を起こしやすくなるケースがあります。日本人の歯はエナメル質が薄いケースが多いのでなおさらです。また、歯の表面のエナメル質は、ペリクルと呼ばれる薄い膜によって覆われていて、外の刺激から保護されています。薬剤によってそのペリクルが剥がれてしまい、外部からの刺激を受けやすくなることも考えられます」

「オフィス」でも「ホーム」でも、実際にホワイトニングを行った患者さんからの訴えで一番多い症状は知覚過敏だという。

「ホワイトニングの影響で知覚過敏になってしまった場合、長くても数カ月程度で改善しますが、中には慢性化してしまう場合もあります。悪化すると歯の神経の炎症=歯髄炎に発展するケースもあるので、症状が出たら早い段階で歯科医に相談してください」

 また、痛みはなくても虫歯があったり、歯にヒビが入っている状態でホワイトニングを行うと、薬剤が歯の内部に入り込んで神経の炎症が一気に進行してしまう危険もある。ホワイトニングを検討している人は、まず虫歯がないかどうかを歯科医院でしっかり確認し、虫歯があれば治療してから施術を受けることが重要だ。

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