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免疫低下でリスク上昇…「帯状疱疹」新ワクチンの副反応は?

佐々木常雄氏
佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 リウマチで某病院に通院している妻の友人が、新しい帯状疱疹ワクチンの予防接種を勧められ、打った方がいいかどうか悩んでいると聞きました。1回2万2000円と結構高額ですし、2~6カ月以内にもう1回接種する必要があるそうです。

 とても元気そうに見える方ですが、リウマチの治療で免疫抑制剤を使っていたとすれば、免疫能が落ちている可能性があり、私は「できれば接種した方がいい」と思いました。

 帯状疱疹の原因は子供の時にかかった水ぼうそうのウイルスです。それが神経節に潜んでいて、疲れ、加齢、ストレスなどで免疫力が低下すると活性化し、帯状に痛みや発疹を起こすのです。ですから、免疫能が低下したがんの患者さんでは発症リスクは高まると考えられます。

 私は帯状疱疹を疑うと、すぐに患者さんを皮膚科に紹介します。もし治療が遅れると、疱疹は治っても神経に沿った痛みが長く残る方がおられるからです。

 新しいワクチンは「シングリックス」といいます。帯状疱疹の予防効果は50歳以上で97%、70歳以上で90%と、とても有効率が高いワクチンです。主な副反応としては、注射部位の痛み78%、赤み38%、腫れ26%、それ以外では、筋肉痛40%、疲労39%、頭痛33%、悪寒24%、発熱18%などの記載があり、かなり高率に起こるようです。

 じつは5年前、私は左手のひらに赤い発疹と水泡ができて、皮膚科の医師に診てもらったところ、やはり帯状疱疹の診断でした。すぐに抗ウイルス薬の「ゾビラックス」を内服して、幸い痛みは残らずに治癒しました。

■新型コロナワクチンとは接種の意味が大きく違う

 先日、K病院のワクチン担当医とシングリックスについて相談したところ、接種してくださるとのことでさっそくお願いしました。これで「帯状疱疹を心配することはなくなる」と安心できました。

 私はこれまでいろいろなワクチンを接種しましたが、いずれも副反応はまったくありませんでした。以下、そんな私のシングリックス接種の経過です。

 某月5日、午後2時、ワクチン担当医が左上腕に接種してくださいました。「他のワクチンよりも痛い方です。当日は、シャワーは大丈夫ですが、入浴はしないでください」とのことでした。

 たしかに筋肉注射は痛かったのですが、無事に何事も起こらずに済みました。夜は注射部位の痛みが残っていました。

 翌6日朝、注射部位は赤く腫れていました。体のあちこちが痛く、反対側の腕、大ももなどに筋肉痛があります。そして、だるくて何もする気になれず、一日中だらだらして過ごしました。また、熱っぽい気がして、体温を朝、昼、晩と測りましたが、いずれも36.4度と平熱でした。

 7日朝、筋肉痛もだるさも半減しました。今日は定期の循環器内科受診があります。病院でいつもの採血と心電図をとってから受診を待っていると、予約時間の前に診察室に呼び出されました。

 急いで入ると、担当医から「何かありましたか? CRP値(炎症反応の指標)が2.99と上がっています」と言われました。一昨日に帯状疱疹ワクチンを接種し、昨日はとてもだるかったことなどを話すと、納得されたようでした。検温では36.1度、酸素濃度は99%で、咳も息苦しさもなく、心電図も問題ないとのことで診察は終わりました。8日以降は、副反応はなくなりました。

 以上が私の1回目接種後の経過です。もちろん2回目を受けるつもりですが、きっと、またこれらの症状が出るのではないかと思っています。

 新型コロナウイルスは「他人にうつす、自分もうつる」ので、ワクチンはぜひ接種していただきたいと思います。しかし、帯状疱疹は自分が持っているウイルスから発症する疾患なので、ワクチン接種の意味は大きく違います。帯状疱疹ワクチンを受けるかどうかは担当医とよく相談されるのがいいでしょう。

 私のように、これまでいろいろなワクチン接種で何もなかった方でも、副反応が出る可能性がありうることを考えておいた方がいいと思います。

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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