適度な運動をしつつ、1日の摂取カロリーを200キロカロリー減らすと、血管の健康が大幅に改善する可能性がある――。今年8月、「Circulation」という循環器の専門雑誌にこんな研究結果が掲載されました。
これは、米ウェイクフォレスト大学医学部の研究者が行ったもので、対象としたのは、肥満の高齢者(65~79歳)160人。ランダムに3つのグループに分け、20週間後の体重や動脈の変化を調べました。
3つのグループとは、「食生活はそのままで、有酸素運動を行うグループ(56人)」「1日のカロリー摂取を200キロカロリー減らし、有酸素運動を行うグループ(55人)」「1日のカロリー摂取を600キロカロリー減らし、有酸素運動を行うグループ(49人)」です。
まず体重の変化ですが、有酸素運動だけのグループは1.66キロ減。1日の摂取カロリーも減らしたグループでは、200キロカロリーの方が8キロ減、600キロカロリーの方が8.98キロ減でした。
次に、動脈の硬化度(動脈硬化の程度)は、運動と200キロカロリー削減を行ったグループだけが有意に改善しており、大動脈進展性が21%上昇、脳波伝播速度は8%低下していました。大動脈進展性は低下するほど、また脳波伝播速度は高くなるほど、動脈硬化が進んでいることになります。
研究を行った研究者は、着目すべき点として、「肥満の高齢者の場合、動脈硬化を改善するには1日の摂取カロリーを減らした方がいいものの、600キロカロリーも減らす必要はなく、200キロカロリー減らすくらいで十分に効果がある」と指摘しています。
■摂取カロリーはケーキ半分程度
200キロカロリーというと、一般的な大きさのケーキ1個が400キロカロリー前後ですから、その半分。
普段食べているおやつの量を減らしたり、カロリーが低めの別のものに替えたりするだけで、減らせるのではないでしょうか。
この研究では「適度な運動」も取り入れています。有酸素運動による脂肪燃焼に適した運動は、「ちょっときつい」と感じる運動強度。最大心拍数40~60%くらいが望ましいとされています。
つまり、運動時の心拍が最大心拍数の40~60%になるように設定すると、効率良く脂肪を燃焼できる。その運動強度で合っているかどうかは、簡単に調べられます。
まず、安静時心拍数を測ります。心拍数と脈拍数は基本的に同数とされているので、朝目覚めた時、起き上がる前に1分間脈拍を測ります。人さし指、中指、薬指を、反対の手首の内側にある動脈に当てるといいです。
次に、最大心拍数を計算します。昔からある簡易的な方法として「220-年齢」でおおよその数値を出せます。
さらに、脂肪燃焼のための運動時の目標心拍数は、「(最大心拍数-安静時心拍数)×40~60%+安静時心拍数」で計算できます。
測り方としては、運動直後に自分の脈を10秒間測り、6倍します。その数値が、目標心拍数と同程度であれば、脂肪燃焼にちょうどいい運動強度。たとえば、40歳で安静時心拍数70の人なら「(220-40-70)×40~60%+70=114~136」。運動時の脈拍が114~136拍であれば、脂肪燃焼に適した運動強度となります。
運動時の体調によって、同じ運動でもすごくキツく感じる時もあれば、そうでない時もあります。
すでに運動習慣がある人は脈拍を継続して測定し、その時に最も良い運動強度を目指せるようにしましょう。
一方、運動初心者は、最初から運動強度にこだわると、つらくて継続できなくなるかもしれません。運動を習慣化することを第一の目標にし、慣れてきたら脈拍を測定して脂肪燃焼しやすい強度を保つようにするといいと思います。自身に合った続けやすい方法がいいですよ。
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