新規感染者が減っても…コロナ禍の「不安疲労」を抱える人が増えている

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 第5波は収束したが、変異株の流行や感染再拡大への不安は消えない。この状況で「不安疲労」を感じている人が増えていると指摘するのは、東海大学医学部客員教授の久保明医師だ。

「不安疲労」とは、「なんとなくだるい」といった身体的疲労感と、「やる気が出ない」「不安だ」といった精神的疲労感が結びついた疲労のこと。今年の日本疲労学会総会・学術集会(7月28日~8月31日)で、久保医師が発表した。

 久保医師らは9月、コロナ禍による日本人の心身の不調について、20~70代の男女1200人にアンケート調査を実施。すると、意欲低下、疲労感・倦怠感、ストレスといった、まさに不安疲労の症状を感じている人が半数を超えた。

「1月にも同様の調査を行ったのですが、9月ではワクチン接種が進み、新規感染者数がピーク時より落ち着きつつあったものの、不安疲労を感じる人は1月の結果より増加。特に高校生の子供を持つ母親(67.6%)、20代女性の非正規社員(75%)が顕著でした」(久保医師=以下同)

 出口が見えにくい今の状況では、ストレスや不安が生じるのは仕方がない。問題は、それが継続することだ。

「心拍や体温、全ての内臓、全身の血管や分泌腺などの働きをコントロールしている自律神経には交感神経と副交感神経があり、2つがバランスを取って体内の環境を整えています。ところがストレスや不安が強い日々が続くと交感神経が高まり、自律神経のバランスが崩れて機能が低下してしまう。それが不安疲労につながる。解消しないままでいれば、自律神経が関与している免疫力も低下し、感染症やがんなどさまざまな病気のリスクを上げます。人によってはうつ病などにつながる可能性があります」

 不安疲労を蓄積させたまま年を越さないよう、対策を講じたい。

「不安疲労というものがあることを理解し、自分や身近な人にもその可能性が十分にあると自覚する。その上で、生活の中での工夫で、自分や周りの人の不安疲労を軽減していくことが大切です」

 基本的には、生活のリズムを一定にし、不安となる情報を過度に見ず、適度に体を動かす。さらには、エビデンスのある方法として、次の3つがおすすめだ。

■笑う・笑い声を聞く

 笑うと幸福ホルモンが出るなどとよくいわれるが、免疫細胞を活性化させるナチュラルキラー細胞も活性化する。

「笑い声を聞くだけでもリラックス効果があるという研究結果もあるので、テレビやラジオで笑い声を聞くのもいい」

■手を温める

「手を温めると交感神経が活性化されます」

■サウナ+水風呂

「サ道」「ととのう」という言葉も話題のサウナだが、「サウナで体を温めた後に水風呂で冷やすことでリラックス効果につながります」。

 一方で、避けた方がいい習慣もある。

 まずは、ハードな運動をして大量の汗をかくこと。爽快感はあるが、疲労が軽減するわけではなく、かえってストレスにつながりかねない。不安疲労対策には、汗がにじむ程度の運動を10分ほどするくらいがちょうどいい。息を吐くと副交感神経が優位になり、リラックス効果をもたらすので、運動後はゆっくりとした深呼吸を取り入れる。

 次に、就寝前の長風呂。交感神経が優位になり、脳が興奮して睡眠の質を下げる。これでは疲れが取れない。不安疲労対策には、「寝る1~2時間前に40度以下の風呂」がベター。

 さらに、毎朝の大音量の目覚ましで跳び起きること。突然耳元で大きな音が鳴ると、交感神経が急激に刺激され、心拍と血圧が急上昇し、自律神経に悪影響を与える。

 理想は、夜更かしを控えて早めに寝て、朝日の明るさで自然に目覚めることだ。

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