進化する糖尿病治療法

パソコンやスマホを長時間使う人ほど過食になり太りやすい

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 デジタル機器の使用時間が長くなることで、子供の視力低下が進んでいると聞きます。昨年6月、京都市でコロナによる一斉休校の終了を受けて市内小学生の視力検査を実施したところ、視力が0.7未満の子供は、前年比で6ポイント増の23%でした。

 また、宮城県気仙沼市の小中学生の2020年度の健康診断での視力が、前年に比べて大幅に悪化。小中とも過去5年間で最も悪化の幅が大きくなっているとのこと。考えられる原因として、コロナ禍で屋内活動の増加、ゲームやスマートフォンの長時間使用、ストレスによる影響が挙げられています。

 デジタル機器の使用時間の長期化は、視力低下だけでなく、肥満の増加にもつながります。

 カナダのトロント大学や米国のカリフォルニア大学の研究グループは、米国最大の長期研究ABCDスタディに登録された9~11歳の1万1025人の子供のデータを分析。それによると、パソコン、スマホ、テレビ、ゲーム、アプリなどスクリーンの前で過ごす時間が長い子供たちは、1年後に過食になるリスクが高くなることが分かりました。

 カリフォルニア大学小児科の医師は、「テレビやスマホなどの画面に注意を引きつけられていると、高カロリーの清涼飲料やジャンクフードを食べ過ぎるのをやめられなくなる恐れがある」「テレビやネットには食品広告があり、食欲をコントロールできなくなる」と指摘しています。

 子供時代に肥満になるのも問題ですが、さらに問題なのは、子供時代に身に付いたそれらの習慣は、成人以降も継続し、肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症といった生活習慣病のリスクを上げることです。成人し、結婚、出産、子育てとなると、生活習慣を発症しやすいその習慣が、彼らの子供にも受け継がれる懸念があります。

「自分の子供を見ていても、確かに太った」と思った方は、今日から子供の生活習慣を変える努力を始めてはいかがでしょうか? その時にチェックして欲しいのは、子供の生活習慣を正す前に、「自分はどうか?」ということ。

 子供も長時間パソコンやスマホを見ているが、親も長時間パソコンやスマホを見ているという家庭は結構多いです。

「思い切って夜はパソコンやスマホを見るのをやめたら、熟睡できるようになった」と話すのは、中学生と小学生の子供を持つ40代男性。

 お子さんは肥満ではないのですが、子供たちの視力低下に関する新聞記事を読み、特に夜、暗いところでのデジタル機器が良くないと知って、最初は子供たちに「夜にスマホを見るのは禁止。寝る時はスマホは部屋に持ち込まず、リビングに置いておくこと」と言ったそうです。

 ところが、「お父さんだって、いつもパソコンやスマホ見ているじゃん」と子供たちが猛反発。仕事で必要だから、と反論しても、「お父さんだけ、ずるい!」となる。

 そこで男性も「本当に急ぎの用件なら電話してくるだろうし、早く起きてパソコンやスマホをチェックすれば問題ないだろう」と、夫婦共に夕飯以降はスマホは仕事用のカバンの中にしまい、パソコンも電源を落とすようにしました。その姿を見て、子供たちも渋々ですが、従うように。

 パソコンやスマホの強い光を夜に浴びると、自然な眠りに導いてくれるホルモン、メラトニンの分泌量を減らし、睡眠の質を減らすと言われていますが、この男性もそれを痛感したといいます。

 睡眠の質が良くなると、朝も爽快に目が覚める。日中の眠気もなくなり、仕事の効率も良くなった。以前より早く目覚めた時間は、家族揃っての早朝散歩に充てたそうです。

 家族間の会話も弾み、「夜のパソコン、スマホをやめるだけで、メリットがかなりあった」と話してくれました。もちろん睡眠の質は糖尿病などの生活習慣病にも関連していますのでお気をつけください。

坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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