名医が答える病気と体の悩み

食べ過ぎでもないのに急に太った…なにかの病気でしょうか

麻酔科医の大西良佳氏
麻酔科医の大西良佳氏(提供写真)

 基本的に病気以外で太る主な原因は①食べ過ぎ、②運動不足、③自律神経の乱れのいずれかです。

 中でも、生活習慣は変わっていないのに太ったといった場合、自律神経の乱れが原因となる「モナリザ症候群」の可能性があります。国際肥満学会では肥満の人の70%がこれに該当するともいわれています。

 モナリザ症候群とは、自律神経のバランスが崩れ、交感神経の機能が低下することで肥満を招く状態です。

 自律神経は、「交感神経」と「副交感神経」から成り立っており、この2つの神経がバランスをとりながら、心臓の動き、血液循環、消化吸収など心身をコントロールしています。活動量が多い日中に「交感神経」が優位になり、体や脳を休める夜に「副交感神経」が優位になりますが、自律神経が乱れている場合には、これらの調整がうまくいかなくなって、「交感神経」の働きが悪く、代謝がしきれなくなります。消費カロリーが低下し、脂肪になって蓄積されるので、太りやすくなるのです。また、太るだけでなく、臓器や血管もダメージを受けます。

 対処法は、不規則な生活を見直し、少なくとも睡眠時間を6時間程度にし、1日3食決まった時間にとるなどして、自律神経を整えるしかありません。

 食事は、良質なタンパク質や野菜、発酵食品を意識して摂取するのがおすすめです。ストレスもためないようにしましょう。

 病気によって、急に体重が増加するケースで考えられるのは「甲状腺機能低下症」が多い。甲状腺ホルモンが少なくなるために、急激な体重の増加、異常な冷え性、低体温、肌荒れ、重度のむくみが起こります。血液検査で診断できます。

 また「肝硬変」でも、下半身のむくみ、腹水によるお腹の膨張、皮膚の黄疸症状が表れます。

 女性の場合は「子宮筋腫」「チョコレート嚢胞」といった病気により、筋腫や嚢胞自体の大きさで下腹部がポコッと出ることがあります。以前、15キロの重さのチョコレート嚢胞の患者さんを診たこともあります。

▽大西良佳(おおにし・よしか)北海道大学医学部卒。2006年国立国際医療センター初期臨床研修終了。順天堂大学医学部麻酔科学・ペインクリニック講座助教などを経て、現在ナカトミファティーグケアクリニック勤務、合同会社ウェルビーイング経営代表。

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