受験生の食事術

受験本番直前!脳の活性化と食事の関係 ベストな状態を目指す

パフォーマンスをはっきするにはこまめな水分補給を忘れずに
パフォーマンスをはっきするにはこまめな水分補給を忘れずに(C)PIXTA

 受験の間際、少しでも脳を活性化して、パフォーマンスを最大限にしておきたい時期ではないでしょうか?これさえ食べたら頭が良くなる! といった夢のような食品は今のところありません。しかし、脳のパフォーマンスを少しでもベストな状態にするためのバランスの良い栄養素の摂り方は説明することが出来ます。

 そもそも、脳を活性化させるということは、どういうことなのでしょうか。脳内には神経細胞という細胞があり、これらが情報を伝達することで私たちは考えたり動いたりすることが出来ます。その神経細胞が機敏に動くためには、「脳に栄養素がきちんと届き」、「神経細胞がきちんと作られ」、「神経細胞がスムーズに情報を伝達できるようにすること」が必要になってきます。つまり、神経細胞が作られ、働けるための栄養素を脳に届けることが大切なのです。

 それではどのような栄養素を摂ったらよいのでしょう。まずは、神経細胞の情報伝達のエネルギー源となる炭水化物です。炭水化物は、脳のエネルギー源のひとつ「ブドウ糖」が集まったもので、米、パン、麺類などの主食、いも類、果物、砂糖などに多く含まれます。ブドウ糖が不足すると、思考能力の低下や集中力の低下、イライラなどが引き起こされます。

 脳にはたくさんのブドウ糖を蓄えることができないので、定期的に補給する必要があります。ただし、急激に摂ることで血糖値スパイクが起こり、かえってパフォーマンスが落ちる可能性もあるので食べ方には気を付けましょう。

■脳は朝食2時間後に本格的に動きだす

 朝食を使った実験では、朝食欠食者は日中に体温が上がりにくい、疲れやすい、集中度が低い、作業量やスピードが少ないといった結果が出ています。せっかく努力してきた成果が最大限に発揮できないのは悔しいですよね。朝食を食べてから約2時間たつと、食べた食事が腸に到達して、ブドウ糖が血液中に行き渡ることで脳が活発に働き出すことがわかっています。試験の開始時間を考慮し逆算して早起きし、しっかりと朝ご飯を食べていくことをお勧めします。ただ、いきなり早起きすると今度は睡眠時間が足りずに調子が悪くなったりもします。今の時期から生活習慣を朝型にしておくといいでしょう。

 次にタンパク質です。脳内の神経細胞は、「軸索」と呼ばれる長い突起を別の神経細胞に伸ばしてくっつくことで、脳の活動に必要な情報(神経伝達物質)を渡しています。この軸索を伸ばすために必要なタンパク質が「アクチン」です。アクチンは筋肉の繊維でもあるのですが、肉や魚、卵や乳製品のタンパク質を摂ることで神経伝達物質そのもの、そして神経細胞の働きを促してくれるでしょう。

 さらに、脳の働きを改善するため特に注目されているもののひとつに「脂質」があります。米国のレッサー医学博士は、「神経細胞は主にオメガ3脂肪酸で作られているが、体内では作られないため、食事で積極的に取る必要がある」というほどです。オメガ3脂肪酸とはDHA、EPAなどの油脂です。サバ、イワシ、アジなどの青魚やマグロに多く含まれていて、エネルギー源や身体の構成成分となるほか、血中の中性脂肪やコレステロールの量の調節を助ける働きもあります。特にDHA、EPAは酸化しやすいので、抗酸化作用のある色の濃い緑黄色野菜と一緒に食べるのが良いでしょう。

 また、大豆、チーズ、卵黄、ゴマ油、ナッツ類などに含まれる「レシチン」は脳の神経伝達をスムーズにしてくれる働きがあるので、記憶力や集中力に関わります。大豆は、豆腐、みそ、枝豆なども含まれるので、比較的取り入れやすい食材ではないでしょうか。

 その他、豚肉、タラコ、レバーなどに豊富なビタミンB群、果物に豊富なビタミンCはストレスによって消費してしまう栄養素なので、この時期は意識して取ることも大切です。

 そして、脳や神経細胞が適切に機能するためには十分な「水」も必要です。私たちの身体の約6割は水で出来ていますので、パフォーマンスを最大限に発揮するためにもこまめな水分補給を心がけてみてください。(おわり)

古谷彰子

古谷彰子

早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学准教授、アスリートフードマイスター認定講師。「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」「時間栄養学が明らかにした『食べ方』の法則」(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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