幸先の良いスタートを切るための正月食事術

おせち料理は糖質と塩分が多い 糖尿病とその予備軍は要注意

おせち料理は糖質と塩分が多い
おせち料理は糖質と塩分が多い

 お正月といえば「おせち料理」。1年の始めに来られる歳神(としがみ)様に供えるもので、豊作や家族の繁栄を願う特別な料理です。めでたいものですし、ついつい食べ過ぎてしまう方も多いのではないでしょうか。

 お節料理は家庭によって味付けに違いがあり、食べる量にもよるのですが、主なおせち料理一人前の食塩/糖質の目安は以下の通りです。

●田作り(10g:0.7g/3g)
●栗きんとん(40g:0.1g/21.4g)
●昆布巻き(30g:1.7g/8.4g)
●黒豆(20g:0.2g/16.5g)
●伊達巻(2切れ:1.0g/11g)
●数の子(25g:0.6g/1.58g)
●かまぼこ(2切れ:0.6g/2.2g)
●紅白なます(30g:0.2g/9g)
●筑前煮(一皿=1.84g/17.47g)

 さらに関東風の「雑煮」(0.97g/26.32g)が加わると、1食あたりの塩分は計7.91g、糖分は116.87gとなります。日本人の食事摂取基準2020年度版では、1日あたりの食塩の目標摂取基準は18歳以上の男性で7.5g未満、同じく18歳以上の女性は6.5g未満。つまり、おせち料理一食あたりで1日に必要な食塩相当量を摂取し切ってしまうということになります。

 また、1日2000キロカロリーを必要とし適度に活動している男女は、活動量の誤差はあるものの、ともに1日250~350g程度の糖質の摂取が望ましいとされています。お正月はただでさえ活動量が減るので、平日通りに食べていると一食当たりの糖質量としては少し多くなってしまうかもしれません。

 とはいえ、せっかくのお正月。おせちを食べないというのも寂しいものです。最近の研究では、糖質の総量を考えるのではなく、なるべく急激に血糖値が上がらないような食べ方を考えることが主流になってきています。食物繊維を含む食材を先に食べることで血糖値の急上昇を抑える効果が報告されていますので、なますやたたきごぼうなどを先に摂ったり、お雑煮に野菜をたっぷり入れる、納豆餅や大根おろしと一緒に食べるのもよいでしょう。また、食前にサラダを意識的に摂るのもよいですね。

 また、だらだら食べ続けると、上がった血糖値が一向に下がらず、それを下げようとするインスリンというホルモンが分泌され続けるので、臓器に負担がかかります。さらに、過剰になった糖は脂肪に変換されるので正月太りの原因にもなります。食べる時間を区切るのも一案です。

 食塩については、加工されているものの量は残念ながら減らせません。摂りすぎないように、小皿にとって食べる、刺身のしょうゆ、肉のソースをつけすぎないように注意するといった工夫をしましょう。

 そもそもおせち料理は、保存期間を長くするため糖質や塩分が多くなっています。ただ、現在は冷蔵・冷凍技術が進化していて、低糖質、減塩のおせち食材もたくさん用意されていますし、自分で作る場合は味を濃くしない工夫もできます。とはいえ、いくら低糖質・減塩おせちでも、食べ過ぎてしまえば結局は同じこと。ぜひ、食べ方に注意しながら楽しんで新年をお祝いしてください。

古谷彰子

古谷彰子

早稲田大学大学院卒。早稲田大学時間栄養学研究所招聘研究員、愛国学園短期大学准教授、アスリートフードマイスター認定講師。「食べる時間を変えれば健康になる 時間栄養学入門」「時間栄養学が明らかにした『食べ方』の法則」(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。

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