腰痛のクスリと正しくつきあう

アセトアミノフェン 安全性は高いが使い過ぎると肝障害のリスク

写真はイメージ
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 前回、腰痛の薬物治療に使われる「NSAIDs」(非ステロイド性抗炎症薬)について詳しくお話ししました。今回は、最近になって腰痛にも多く使用されるようになった解熱鎮痛薬「AAP」(アセトアミノフェン/商品名=カロナール)について解説していきます。

 昨年から日本で始まった新型コロナワクチン接種では、副反応で生じる発熱に対応する解熱鎮痛薬としてアセトアミノフェンが推奨され、ドラッグストアなどで品薄状態が続いたのは記憶に新しいところです。

 アセトアミノフェンは、脳の中枢神経や体温調節中枢に作用し、脳の痛みに対する感受性を低下させたり、皮膚の血管を広げて熱を放散させることで体温調節にも効果があると考えられています。NSAIDsとは違って炎症を抑える作用はほとんどなく、効き目が穏やかで体への負担や副作用も少ないため、子供や妊婦にも処方される薬です。

 そのため、「小児用の熱冷まし」というイメージを持っていて、腰痛の強い痛みに対する効果を疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。しかし米国や欧州では、以前からNSAIDs(ロキソプロフェンナトリウム、ジクロフェナクナトリウム、インドメタシンなど)よりもアセトアミノフェンの方が効果、安全性、価格の面でバランスが良いとして医療現場においても繁用されています。

 日本でも、21世紀に入ってからアセトアミノフェンを再評価する動きがあり、多く用いられるようになっています。関節リウマチなど炎症を伴う激しい痛みには不向きですが、慢性腰痛に対しては有効性と安全性が高いことが考慮され、腰痛診療ガイドラインではNSAIDsとともに第1選択とされています。また、慢性疼痛(とうつう)治療ガイドラインでも同じく使用が推奨されています。

 ただし、安全性が高いといっても、注意しなければならない点もあります。NSAIDsで見られるような胃腸障害や腎障害の副作用は比較的少ないとされていますが、問題となるのは肝障害です。

 アセトアミノフェンは、現在は1日に最大4000ミリグラムまで使用することが可能ですが、総量1500ミリグラムを超える高用量を続ける場合は肝臓に負担がかかるとされ、定期的な肝機能検査を行うなどの注意が必要です。

 アセトアミノフェンは市販の総合感冒薬にも含まれているケースもあります。アセトアミノフェンのほかにも使用している医薬品があって不安な方は、薬剤師に相談してください。

池田和彦

池田和彦

1973年、広島県広島市生まれ。第一薬科大学薬学部薬剤学科卒。広島佐伯薬剤師会会長。広島市立学校薬剤師、広島市地域ケアマネジメント会議委員などを兼務。新型コロナワクチンの集団接種業務をはじめ、公衆衛生に関する職務にも携わる。

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