病気を近づけない体のメンテナンス

膀胱(上)過活動膀胱は女性よりも男性に多い 医師が解説

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 加齢に伴って増えてくる「尿トラブル」。その代表的な疾患が40歳以上の日本人の8人に1人が罹患しているとされる「過活動膀胱」だ。さまざまな原因で引き起こされる症候群で、「急に我慢できない尿意が起こる(尿意切迫感)」「一日中、何度もトイレに行く(頻尿)」「就寝中に尿意で目が覚める(夜間頻尿)」「トイレに間に合わず、漏らしてしまうことがある(切迫性尿失禁)」が特徴的な症状になる。

 ただし、頻尿(日中の排尿回数が8回以上)の原因を過活動膀胱だと思い込んでいる人は多いが、必ずしも過活動膀胱と頻尿はイコールではない。「尿トラブルは自宅で治せる」(東洋経済新報社)の著者で「永弘クリニック」(埼玉県新座市)の楠山弘之院長が言う。

「表れている尿トラブルの症状が過活動膀胱であると決定づける一番の要素は、急にトイレに行きたくなり、我慢できないほどの尿意切迫感が週に1回以上あることです。通常は、トイレに行きたくなり、だんだん我慢できなくなります。尿意切迫感の場合は、トイレに行きたくなる兆しもなく、突然行きたくなるのです。ですから、切迫感を伴わず、ただ排尿回数が多いだけでは過活動膀胱ではありません」

 つまり、週1回以上の尿意切迫感があるのが必須で、他の症状として頻尿や夜間頻尿が加わることがあったり、切迫性尿失禁が加わる場合があるというわけだ。

 過活動膀胱の原因は多岐にわたるが、大きく「神経回路に異常がある場合」と「神経回路と無関係」の2種類に分けることができる。

 神経回路に異常がある場合とは、基礎疾患によって排尿をコントロールしている脳の神経に異常が出て、症状が表れる。たとえば、脳血管障害、パーキンソン病や脳腫瘍による脳の障害、脊髄の病気、糖尿病による末梢神経障害、認知症、椎間板ヘルニアなど。過活動膀胱の改善には原因となる疾患の治療が必要になる。

■前立腺肥大の大半で合併

 神経回路と無関係のもので男女共通なのは、膀胱血流障害、自律神経の乱れ、膀胱の老化、膀胱の慢性炎症、骨盤底筋群の筋力低下、メタボリック症候群など。女性特有の要因では、女性ホルモンの低下、骨盤臓器脱。男性では前立腺肥大症が関係する。原因がはっきりしないものが多いが、投薬や生活習慣の改善で症状が改善する場合も多く見られる。

「過活動膀胱は女性に多いと思われがちですが、実は日本では男性の方が多い尿のトラブルです。それは過活動膀胱が前立腺肥大症に伴って起きるからです。前立腺肥大症は50代から急増して、50~75%の人が過活動膀胱を合併します。ただ、男性の場合は尿道が長いので、過活動膀胱の症状が出ても尿失禁にはなりにくいのです」

 ただし、過活動膀胱と間違えやすい病気はたくさんある。尿トラブルの症状で悩んでいるなら、まずは排尿状態を知るために、排尿を記録することが大切。過活動膀胱の場合は、尿自体に変化が表れたり、尿がたまってきたときや排尿時に痛みを伴うことはない。「排尿時や膀胱に痛みがある」「血尿が出る」「尿に濁りがある」などの症状があったら、すぐに泌尿器科を受診するべきという。

 頻尿の症状が出ると水分を控えるという人がいるが、それは間違い。水分は多くても少なくても尿トラブルに影響がある。

「頻尿だからと水分摂取を控えてしまうと、そもそも弱酸性である尿が酸性に強く傾いてしまうため、これが膀胱を刺激して、さらに頻尿を招きます。逆に取り過ぎると、体内で余った水分を排出するように腎臓が働き、頻尿になります」

 水分補給に最適なのは、常温の水か、さゆ。1回につき、コップ1杯(150~200ミリリットル)の量を1日6~8回程度飲む。

 飲むタイミングは、汗をかいたときや排尿した後など、体から水分が出ていったときに飲むのがポイントになる。

「冷え」も尿トラブルの原因になる。冷えで膀胱の筋肉が収縮すると、尿意を感じやすくなる。また、体が冷えると自分の意思とは関係なく働く自律神経が乱れ、膀胱が収縮しやすくなる。

 セルフケアとして、ヘソから指幅4本分ほど下の「下腹部」、お尻の割れ目の少し上にある「仙骨」、「ふくらはぎ」を使い捨てカイロや温熱シート、レッグウオーマーなどで温めるといいという。

 次回は、過活動膀胱の症状を改善させる「膀胱訓練」「骨盤底筋トレーニング」を紹介する。

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