腰痛のクスリと正しくつきあう

痛みを強力に抑える「オピオイド」腰痛治療では「非麻薬性」が使われる

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 腰痛の治療では「オピオイド」と呼ばれる鎮痛薬が使われるケースもあります。オピオイドとは、中枢神経(脳・脊髄)や末梢神経に存在するオピオイド受容体に結合して鎮痛作用を示す物質の総称で、植物由来の天然のオピオイド、化学的に合成・半合成されたオピオイド、体内で産生される内因性オピオイドがあります。

 一般的に「麻薬性鎮痛薬」とも呼ばれているため、依存性に関して不安を抱く方もいらっしゃるでしょう。しかし、社会的用語である「麻薬」と、薬理学的・分子生物学的用語である「オピオイド」は異なるもので、医師が処方した用法・用量を守って使用すれば依存性は少ない薬剤とされています。

 腰痛診療ガイドラインでは、急性、慢性とも「弱オピオイド」が推奨されていて、ひどい痛みに対してNSAIDsやアセトアミノフェンなどの鎮痛薬では効果が不十分な場合、選択肢のひとつになっています。

 腰痛治療では「非麻薬性オピオイド」(日本の「麻薬及び向精神薬取締法」で指定されている麻薬に含まれない薬剤)が使われます。中でも強い痛みに対してはトラマドール塩酸塩が繁用されています。

 トラマドール塩酸塩のみを有効成分とするトラマールやワントラム・ツートラムのほか、トラマドールに加えてアセトアミノフェンを配合し、鎮痛効果増強を図った内服薬のトラムセット配合錠もよく使われます。この場合、過量投与による肝機能障害の副作用に注意が必要です。もともと肝機能障害がある方や、市販のアセトアミノフェン含有製剤を服用されている方は、薬剤師に相談してください。

 同じく非麻薬性オピオイドであるブプレノルフィンも、慢性腰痛に対して使用されています。これまでの座薬や注射薬に加え、近年はテープ剤(貼り薬)が開発され、多く使われるようになりました。いわゆる湿布薬とは違って患部に直接貼り付けるのではなく、胸部、上腕部、背中に貼付して使用し、7日ごとに1回貼り替えます。

 慢性腰痛の治療で用いられる非麻薬性オピオイドには、ほかにペンタゾシンがあります。これも、NSAIDsやアセトアミノフェンなどの鎮痛薬では効果が不十分な場合に検討されます。

 これらのオピオイド鎮痛薬には、共通する副作用として眠気、便秘、吐き気、依存性、呼吸の抑制などが知られています。併用している薬剤も含め、それぞれリスクも異なるので、服用する際や使用を中止する場合は、必ず医師の指示に従ってください。

池田和彦

池田和彦

1973年、広島県広島市生まれ。第一薬科大学薬学部薬剤学科卒。広島佐伯薬剤師会会長。広島市立学校薬剤師、広島市地域ケアマネジメント会議委員などを兼務。新型コロナワクチンの集団接種業務をはじめ、公衆衛生に関する職務にも携わる。

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