今回は中高年の肩痛で頻度の高い「凍結肩」に対する治療法、非観血的関節授動術についてお話しします。
凍結肩の硬さを取る治療としてリハビリや内視鏡手術を紹介してきましたが、今回の治療法は、その中間に位置します。
まず私たちが痛みを感じるためには、全身に伸びる神経の働きが大事です。肩周辺に伸びる神経が、肩の異変を痛み刺激として捉え、その情報が首を経由して脳に伝わり「痛い!」と感じます。
そこで脳から肩に伸びる神経に対し、途中の首のところで神経にブロック注射をすることで、肩周辺の痛みを感じなくさせるのです。局所麻酔と比べると広く深い範囲の痛みを感じなくさせますが、全身麻酔と比べると目が覚めている状態が違います。
このブロック注射の後、医師が腕をあらゆる方向に愛護的かつやや強めに動かし、固まっている肩の深部にある靱帯(関節包)を外側から引き伸ばすことで一気に動きを取り戻すのです。皮膚を切らないため血を「観る(観察する)」ことなく関節に動きを授けられるので「非観血的」関節授動術(サイレントマニピュレーション)と呼びます。
日帰り治療ではありますが、首にブロック注射をしているため、施術後、安全確認をしてからの帰宅となります。具体的には、「首や胸など周囲の重要臓器に影響が出ていないか」「麻酔の効きが肩から手指までに広がっていないか(施術後すぐは腕がしびれブランとして動かないことがありそのまま帰宅するには心配)」などを確認します。また、施術は多少なりとも強引に動かすことになるので骨折する恐れもあり、その有無も確認します。
眠らないですべての処置を行うため、首へのブロック注射や授動術の様子も丸見えですので、興味深い人もいれば、ショッキングに感じる人もいるかもしれません。心臓病などで血液をサラサラにする薬を飲んでいる場合、ブロック注射で出血などの心配がないか個別に検討を要します。
また早期にリハビリを再開し広がった肩が再度固まらないようにします。
五十肩を徹底解剖する