東北より南では高山でしか採れないことから、「行者が食べるニンニク」と名付けられたといわれる行者にんにく。タマネギ、ニンニク、ニラなどと同じユリ科の仲間です。ニンニクに似た独特の香りとシャキシャキとした食感がおいしい山菜で、栄養価の高さと滋養強壮に効くという効能からか「山菜の王様」ともいわれているほどです。
北海道の特産山菜としても有名ですが、行者にんにくが収穫できるまでには何と5年もの歳月を必要とするのです。近年、天然物の数が激減する一方で、栽培技術も確立され、現在出回っているものの多くは栽培されたものです。1月からハウス栽培物が、3月ごろから北海道の天然物が出回り始め、産地を北へ移しながら6月初旬ごろまで続くので、今はまさに旬真っ盛りの時期ですね。
そんな行者にんにくの注目すべき栄養素はβカロテンとビタミンKの含有量の多さ! βカロテンは葉の部分に100グラム当たり2000マイクログラムも含まれます。動脈硬化を予防したり、抗がん作用などが期待される栄養素です。ビタミンKは山菜の中でもトップクラスを誇る量が含まれています。カルシウムを骨に定着させてくれるので、骨を丈夫にするのに欠かせない栄養素です。
また、行者にんにくのにおいのもとであるアリシンは実はニンニクよりも多く含まれています。アリシンがビタミンB1と結合することにより、アリチアミンという脂溶性の成分になります。そのおかげで体の中に長時間とどまることができるようになり、エネルギーを発生させやすくしてくれるので、体内の糖を代謝させたり、疲労回復にも役立ちます。
高血圧、高血糖、冷えなども改善し、血栓や動脈硬化を予防するほか、がん予防に効果的という報告もあります。食中毒や感染症を予防するための強い殺菌作用もあるので、体のメンテナンス維持のために取りたい栄養素ですね。行者にんにくが滋養強壮に強い効果があるといわれるのは、このアリシンが含まれているのも大きいでしょう。ただし、アリシンの強い殺菌作用のため、食べ過ぎると、人によっては腹痛や下痢を引き起こしたり、吐き気を催す場合がありますので、食べ過ぎには気をつけましょう。
時間栄養学と旬の食材