大阪国際がんセンターの研究グループが調べたがんの生存率が話題を呼んでいます。2012年までの3年間に大阪府内でがんと診断されて手術を受けた15歳以上の約8万6000人を対象に、3年後の生存率を分析。今回の調査が興味深いのは、国や大阪府が指定するがんの拠点病院と、それ以外の病院の治療成績を比べている点です。
その結果、大きな差がついていることが分かりました。すべてのがんの生存率は、国の拠点病院が86.6%、府の拠点病院が84.2%で、拠点病院以外は78.8%と、拠点病院以外の病院は国や府の拠点病院に比べて5ポイントから8ポイント低かったのです。
がんの種類別では、肺がんの差が最大で、国の拠点病院が非拠点病院より11.7ポイント高く、大腸がんは9.2ポイント、胃がんは9ポイントでした。一方、乳がんや子宮がん、前立腺がんなどは最大でも3ポイントです。
拠点病院とは、がん診療連携拠点病院で、がん治療の地域格差を解消して、全国どこでも質の高いがん治療が受けられるようにするため、一定の要件を満たした医療機関を厚労相が指定します。全国に405カ所。各都道府県で中心的役割を担う都道府県がん診療連携拠点病院と、都道府県内の各地域で中心的な役割を果たす地域がん診療連携拠点病院に分けられます。
各都道府県のがんセンターのほか、大学病院、総合病院などが該当。厚労省のHPでチェックできます。
これとは別に都道府県が指定する拠点病院もあり、今回は国指定と大阪府指定、それ以外で差が出たわけですが、制度の趣旨からすると当然といえば当然の結果といえます。
そこで、読者の方が気になるのは、拠点病院の実力や選び方だと思います。一概には言えませんが、ヒントを紹介しましょう。
一般にがんは高齢者に多いのが特徴の一つ。そうすると、がんのほかにも生活習慣病をはじめいくつか持病がある人が珍しくありません。総合診療がとても重要です。その点を踏まえると、がん治療に特化した各地のがんセンターが必ずしもよいとはいえないと思います。
たとえば、国立がん研究センターは原則、救急診療を行いません。容体が急変したときに対応できないのも、高齢者にはネックでしょう。
それらを考慮すると、国から拠点病院の指定を受けた大学病院を選ぶのが無難な選択といえるかもしれません。