五十肩を徹底解剖する

腱板断裂が疑わしい時はMRIを 診断がついたら断裂の程度を調べる

写真はイメージ
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 私が診療を行っている肩専門外来では、今までなんとなく「五十肩だから仕方ない」と諦めていた肩の痛みが、実は腱板断裂だと分かり、驚かれる患者さんによく遭遇します。

 前回の本欄で触れたように、腱板断裂はレントゲンだけでは分からず、疑わしい場合には、追加検査として画像診断のMRIを行います。

 MRIでは、大きいトンネルのような機械の中に寝転がって入ります。痛い検査ではないものの、検査が終わるまで30分ほど同じ姿勢でじっと我慢する必要があります。検査中は「ガガガガ……」と音がするため、前もって耳当てをつけていても耳障りかもしれません。またトンネルに長く入ることになるため、閉所恐怖症の患者さんは注意が必要です。

 MRIはX線を用いず、磁気で体の中を調べます。放射線被曝の心配はありませんので安心してください。

 一方、磁気を用いた検査のため、心臓ペースメーカーなどを装着している人ではそれらの医療機器に影響が出る恐れがあり、前もって検査可能かどうか確認する必要があります。

 MRIの有用性と普及から、近年では真ん丸のトンネル内に入る閉塞感からくるストレスを減らすため、「C」の字形に開口したMRIも登場しています。また、MRIの撮影可能な医療機器も広まってきています。

 MRIは時間をかけて1カ所を精密に調べる検査のため、全身を一遍に検査できません。左右の肩を同時に調べることも不可能で、片方だけになります。

 MRI以外では、超音波検査でも腱板断裂の診断が行えます。超音波検査の利点は、外来診察の場で手軽に行えることです。検査に向かない患者さんがいないことも強みです。

 費用は保険などにもよりますが、MRIがおおよそ5000円、超音波検査が1000円ほどです。腱板断裂はMRIや超音波検査でほぼ100%診断が可能です。

 断裂が判明したあと、次に調べることは断裂の程度です。腱板は4本の筋肉の総称ですので、4本中何本が切れているのか。少し切れただけか、大きく切れてしまっているのか。切れて使えなくなった筋肉がやせ細ってないか。断裂のひどさによって治療方法と見通しが変わってくるため、これらの見極めが非常に重要になります。

安井謙二

安井謙二

東京女子医大整形外科で年間3000人超の肩関節疾患の診療と、約1500件の肩関節手術を経験する。現在は山手クリニック(東京・下北沢)など、東京、埼玉、神奈川の複数の医療機関で肩診療を行う。

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