水ぼうそう(水痘)を発症し、治癒した後でも、水痘・帯状疱疹ウイルスは終生その発症者の知覚神経節に潜伏感染し続けます。そして数年から数十年を経て、精神的ストレス、体力の低下、糖尿病など他の疾患の合併で免疫力が低下した状態になった時、ウイルスがその人の体内で再度増殖(再活性化)を起こします。この増殖によって生じる皮膚疾患を「帯状疱疹」といいます。
日本人のなんと3人に1人が80歳になるまでに帯状疱疹を経験すると推定されていて、患者の約7割が50歳以上です。ただ、若い人でも発症する場合もあり、40代の筆者も帯状疱疹の一種であるラムゼイ・ハント症候群に罹患しました。
帯状疱疹の症状は、まずピリピリ、チクチク、ズキズキといった神経痛が出て、1週間程度で痛みがある部分に赤い斑点が見られるようになります。その後、赤い斑点内に水ぶくれが生じ、水ぶくれが破れてびらん(ただれた状態)になり、最終的にそこがかさぶたになって症状が治まる、という経過をたどります。
通常、右側または左側どちらか一方だけに症状が表れるのが特徴です。多くの場合、皮膚症状が治ると痛みも消えますが、神経の損傷によってその後も痛みが続くケースがあり、これを「帯状疱疹後神経痛(PHN)」と呼んでいます。
帯状疱疹の治療にはアシクロビル、ビダラビン、バラシクロビル、ファムシクロビルといった抗ウイルス薬が有効で、点滴や内服による治療で治癒までの期間短縮が期待できます。ただし、発症から72時間以内に投与しないと効果が期待できないともいわれているので、早めに治療を開始することが大切です。
痛みが長期間残った場合(PHN)には、非ステロイド性抗炎症薬のほか、神経節ブロック、理学療法、三環系抗うつ薬や抗けいれん薬、漢方薬、レーザー治療など、痛みに対するさまざまな対症療法が行われています。
50歳以上の人は、帯状疱疹の予防、発症時の症状軽減を目的としたワクチン接種を受けられます。発症はもちろん、後遺症の痛みに苦しまないためにも検討をおすすめします。
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