手術は日帰りでここまでできる

鼠径ヘルニアは放置するとヘルニア嵌頓や腸閉塞のリスク高める

写真はイメージ
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 鼠径ヘルニアの「ヘルニア」という言葉の意味は、腸や、卵巣、膀胱といった体の組織や臓器が、本来あるべき位置からはみ出した状態を指します。

 そのため、鼠径ヘルニアといった場合は、足の付け根(鼠径部)に生じるヘルニアの総称となり、一般的には脱腸と呼ばれています。

 鼠径ヘルニアでは、腹部の筋肉で構成される腹壁に生じた穴を通して腸が飛び出るのですが、放置してその穴が自然と塞がるのかというと、それは無理です。治療は手術が原則。症状や状態によって経過観察するケースもあるものの、手術以外に穴を塞ぐ方法がないのです。

 この鼠径ヘルニアはあらゆる年齢で起こり得ます。中でも男性に多く発生する傾向があるとされています。

 加齢その他、原因は種々論じられていますが、はっきりした根拠はなく、犬や猫にも発生します。人間の場合は二足歩行が病気の進行を進めている可能性があり、そもそも寿命が長いがゆえに手術が行われる件数も多いと考えられます。いきみや咳、あるいは重いものを持ち上げようとしたときを契機に症状を自覚するというのはよくある話です。

 典型的な症状は膨らみのみですが、違和感や痛みを伴う人もいます。軽く押すことで飛び出た腸は一時的に元にもどりますが、再びお腹に力を入れると膨らみ、これを繰り返すことになります。

 そしてその膨らみを放置すると、次第に穴が大きくなっていき、病気として進行します。また、時として、飛び出した内臓がその穴にはまり込んで元に戻らなくなる、ヘルニア嵌頓や腸閉塞を起こす可能性があります。さらにそれが進むと、腸の血流が途絶えて腸の壊死といった場合も。そうなると激しい腹痛や嘔吐、発熱などの症状があらわれます。

 当院ではそんな鼠径ヘルニアの手術に特化した設備を整え、腹腔鏡手術を行っています。

 手術の内容は小さく開けた穴から棒状の手術機器を使い、人体に埋め込んでも問題がない素材で作られたメッシュで、弱くなった穴の部分を面で補強するものですが、手術は通常2~3人の医療者で行われ執刀医はもとより、助手として介助する者にも安定したスキルが要求されます。

 そしてそれを可能にするためにさまざまな診療システムを取り入れ、合理化に努めてきました。日帰り手術も、その合理化の結果のひとつです。

 入院の時間がないからと手術をなかなか受けられず、鼠径ヘルニアの症状に悩み、重症化の不安から解放されないままにいる人は、日帰り手術も検討してみてはいかがでしょうか?

大橋直樹

大橋直樹

日本外科学会認定外科専門医、全日本病院協会認定臨床研修指導医。東京外科クリニックグループでの日帰り手術の件数は2022年4月末日時点で3101件。

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