科学が証明!ストレス解消法

暴言は生産性を低下させネガティブな気持ちは注意力の低下を招く

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 イライラしやすかったり、ストレスを抱え込みやすかったり──。

 ふと自分の生活を見直してみると、いつのまにかネガティブな考え方やものの見方をしていることが少なくないと思います。

 脳は、主語を区別できないとよく言われます。たとえば「おまえはバカだ」と誰かに言うと、脳は「自分はバカだ」と受けとってしまうのです。もしそうだとしたら、自分でネガティブな言葉を発するだけで、他者に嫌なことを言われたときと同等のダメージを受けてしまう可能性があるということです。

 東フィンランド大学のネウボネンらが行った、622人を対象にした認知症の分析、および1146人を対象にした寿命の長さの分析(2014年)は、非常に示唆に富んでいます。

 高齢になると、他者に対して不信感を抱く傾向がある人ほど、認知症のリスクが約3倍も高いことがわかったというのです。何かと斜に構え、ネガティブな内容ばかり考えていると、心がすり減り、体に悪い影響を与えかねない。これは、考えものでしょう。当然、ネガティブな言葉を頻繁に口にしようものなら、心の健康状態を悪化させてしまう可能性が高まります。

 また、暴言も百害あって一利なし。

 南カリフォルニア大学のポーラスとフロリダ大学のエレズは、暴言が他者にどのような影響をもたらすのかを研究(09年)しているのですが、次のことがわかりました。 

①直接暴言を吐かれた人は、処理能力が61%、創造性が58%下がる②自分に対してではないが、自分の所属しているグループに対して暴言を吐かれた人は、処理能力が33%、創造性が39%下がる③他人が暴言を吐かれるのを目撃しただけの第三者でも、処理能力が25%、創造性が45%下がる──。

 このように暴言は、相手を傷つけるだけでなく、その人の生産性を損なわせ、周辺にまで影響を与えてしまう悪手でしかないのです。「自分に対してネガティブなことを言わない」ことに加え、「周りの人に対しても暴言は控える」ことが、あなたの精神衛生と人間関係を良好に保つ秘訣。

 仕事でカッとなって、同僚や部下に対して乱暴な言葉を言いたくなる気持ちもあるでしょうが、口にしないように。口にしてしまえば、冒頭で書いたように、自分もダメージを受けてしまうわけですから、まさに百害あって一利なしなのです。

 また、大阪大学の苧阪らは、ネガティブな気持ちは、注意力の低下を招くことを脳科学的実験(13年)によって証明しています。

 ネガティブな気持ちが起こると、ポジティブな気持ちに戻そうと脳が頑張るため、脳のリソースを多めに消費します。結果、注意力のために使う脳のリソースが減り、注意力が低下する。注意力が下がると、当然仕事や勉強などに支障をきたしてしまい、いらぬストレスを生み出します。処理能力や創造性が低下するという、先の実験内容とリンクします。

 ネガティブに考えがちな人は、このことを思い出し、必要以上にネガティブな考え方をしない。「ネガティブは伝播(でんぱ)する」をお忘れなく。

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堀田秀吾

堀田秀吾

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

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