痛みのない暮らしを取り戻す

注射で交感神経の緊張を緩和しアトピー性皮膚炎のかゆみを軽減

写真はイメージ
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 私の元には、いろんな病院で診てもらったけれども治らない・改善しないといった患者さんが大勢いらっしゃいます。医者からサジを投げられた方も少なくありません。

 その中のひとり、ある女性の患者さんのお話を紹介しましょう。

 40代前半のAさんは幼少期からアトピー性皮膚炎に悩まされ、いろいろな病院を転々としましたが、思うように改善せず、ステロイドに加え、免疫抑制剤の塗り薬を使ったりもしていました。

 重度のアトピー性皮膚炎は、炎症が体内で発生しているわけですから、激しいかゆみを伴い、その結果、皮膚が象のように乾燥して硬くてシワシワになってしまいます。色も紫色になり、外見の問題からも精神的な苦痛を伴う疾患です。Aさんは若い頃からつらい思いをされていました。

 15年前、この症状をなんとかできないかと、調べあげた末に私のクリニックに来られました。当時、Aさんのアレルギーの指標であるIgEは「16863」というものすごく高い値を示していました。

 正常値は170以下ですので、この数字がいかに高いものなのかおわかりになるでしょう。

 アトピー性皮膚炎は、ストレスなどによる交感神経の過緊張によっても症状が悪化します。交感神経の過緊張は白血球の顆粒球を増加させることにもつながり、活性酸素が増えて炎症が悪化するからです。

 私は、交感神経過緊張が血管収縮をさせているのを抑える星状神経節ブロック注射をお勧めしました。さらに、パンが好物で、パン食中心の生活をされているというAさんの話から、特定の食物が原因でアレルギー反応を起こす食物アレルギーも疑い、添加物やトランス型脂肪酸、ガゼイン、グルテンといった食品からくるアレルギー原因を除去する食事療法をお伝えしました。

 最初、Aさんは星状神経節ブロック注射を躊躇されていました。これは患者さんがブロック治療に対して持つ代表的な反応のひとつです。注射で麻酔薬を入れることが怖いと感じられたようです。

 しかし、ブロック注射が、おおもとの原因である交感神経の過緊張を緩和し、全身の血流をよくし、免疫のバランスを整えることを理解してもらえて、ブロック療法に入ってから症状が落ち着き、今ではIgEは822まで改善しています。皮膚症状やかゆみも改善しており、ここ2年、Aさんの状態は月に1度の治療ペースで安定しています。

西本真司

西本真司

医師になって34年。手術室麻酔、日赤での緊急麻酔、集中治療室、疼痛外来経験後、1996年6月から麻酔科、内科のクリニックの院長に。これまでに約5万8000回のブロックを安全に施術。自身も潰瘍性大腸炎の激痛を治療で和らげた経験があり、痛み治療の重要性を実感している。

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