ライデン大学のレントとエラスムス・ロッテルダム大学のソブリンの研究(2017年)によると、野心的な目標を設定するより、手頃な目標を設定した方がパフォーマンスが上がるそうです。目標の設定にはいろいろあると思うのですが、私は小さな目標を立ててコツコツと達成していくことをおすすめしています。
これは、日常生活においても同じです。たとえば、「部屋の片づけをする」と目標を立てたとしましょう。片づけが得意な人は、このようなざっくりとした目標でも対応可能でしょうが、片づけが苦手な人や、ADHD気質の人、ものすごく面倒くさがりな人にとっては話が変わってきます。
「片づけをしなければ」と考えると、どこから手をつければいいのかわからなくなり、何もできなくなってしまう……。そういった可能性もあるため、小さな目標を有効活用するのです。
「部屋の片づけをする」ではなく、「今日は机の上だけを片づけよう」などと1カ所に範囲を絞ると、目標が明確になり、“やる気”につながります。また、「モノを減らそう」と考えているなら、「1週間に必ず1つは不要なものを処理する」と決めた方が、どんどんモノは減っていきます。
一方で、日常的な目標設定とは別に、人生や仕事における目標もあります。しかし、「自分は何をやったらいいのかわからない」という人もいるはずです。何をしていいのかわからないから、当然、“やる気”も生まれません。
そういった場合は、目標を実現している知り合いや身近な人を「コピペせよ」という研究(論文の中でも、「copy-and-paste」という言葉が使われているほど)を参考にするといいでしょう。つまり、「真似をしろ」というわけです。
ペンシルベニア大学のメーアらは、1000人以上を対象に運動習慣と目標達成に関する調査(2020年)を行いました。その結果、周囲で運動習慣をつけることに成功している人の目標の設定の仕方と達成方法をそのまま真似すると、自分も運動習慣が身につき、自身の目標を達成しやすくなると報告しています。
ビジネスの世界では、成功の法則に「TTP」という言葉があるそうです。「TTP」とは「徹底的にパクれ」の略、「模倣は創造の母」とも言い換えられます。たしかに何かを模倣して、そこから発展させたことで成功したビジネスはたくさんあります。文明も産業も芸術も模倣によって発展してきた過去を持ちます。
私たちは自分の趣味に合うようなお店や商品を口コミサイトやレビューを見て決め、満足することが往々にしてあります。それだって見方を変えれば、人の体験をコピペしているようなもの。
メーアらの実験は、運動というただでさえ面倒くさく、三日坊主で終わりがちなことでも目標の達成度合いが向上することを示しています。目標がないのであれば、自分が「かっこいい」とか「すごい」と思えるような人の習慣をコピペしてみるといいでしょう。
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