腹痛の受診は「いつから」「どこが」「どのように」を伝える

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 女性の4人に1人が生活に影響する激しい腹痛を経験している。製薬会社「アルナイラム・ジャパン」による「腹痛に関する全国実態調査」で明らかになった。

 調査の対象は、15~49歳の女性15万人。中等度以上の腹痛経験者のうち、腹痛の頻度が1カ月に1回以上の人は半数を超えた。

 JA尾道総合病院院長で広島大学名誉教授の田妻進医師が言う。

「腹痛は、医療者にとってもコモン(一般的)な症状。広島大学病院在籍時代の過去の調査では、年間の成人初診患者約1万9000人中、1位が腹痛で15%に至りました。プライマリー現場では腹痛が受診動機の多くを占めているのです」

 前出の女性15万人調査からは、ギリギリまで我慢し、耐えられなくなってようやく受診する人が多いことも推測できる。というのも激しい腹痛のうち65%は医療機関未受診。中等度以上の腹痛経験者の67%が市販薬で対応、60%が「腹部や体を温めた」とセルフケアで対応したと回答している。

 実は記者自身、腹痛を市販薬でごまかしていたらどんどんひどくなり、深夜には脂汗が流れるほど悪化。救急外来へタクシーで急行したところ、魚などにいる寄生虫アニサキスが原因で腸閉塞を起こしており、腹水がたまっていて緊急手術となった。退院後も術後の腸閉塞を繰り返し、2年間で3回入院した経験がある。

■「お腹以外」の可能性も

「腹痛は種類、要因がさまざま。胃、腸、胆嚢、膵臓といった腹部臓器に由来するものだけでなく、泌尿器科や産婦人科領域の疾患もあれば、心筋梗塞のように腹部臓器に由来しないものもあります。糖尿病性ケトアシドーシス(糖尿病の急性合併症)や帯状疱疹でも腹痛を主訴に受診することもあります」(田妻医師=以下同)

 意外なところに腹痛の原因があるかもしれない。前出の調査では、腹痛の診療を日常的に行っている医師にもアンケートを取っており、急激な腹痛について、半数以上が「検査結果や所見と症状の強さが一致しない」「通常の問診・検査では原因がわからないことが多い」と、診断の難しさを示す回答をしている。

 腹痛が生じた際、何科を受診するのが望ましいのか? かかりつけ医がいない、原因が思い当たらないなら、総合診療科が適している。

 総合診療科は、どの科を受診していいかわからない場合や、診断がついていない場合などにかかる診療科だ。大学病院など総合病院に設けられている。ネックとしては、総合診療科の専門医は医師全体の2~3%とまだ数が少ないことか。

「総合診療科では診断を確定するために画像診断などを行います。しかし、画像診断は場合によっては患者さんが不利益を伴うこともあるため、検査の前に病歴の聴取などで病気の絞り込みをする検査前診断が重要です」

 医師の「聞き出す力」が問われるが、患者側としては自分の身を守るためにも腹痛の状態をできる限り正確に伝えられるようにしておくといい。

 急に痛みだしたのか、じわじわひどくなっているのか、どういうときに痛みがひどくなるのか、どこが痛いのか、痛みが別の場所に飛んでいくことがあるか、痛みの時間的な経過は……。持病や過去の病歴などがあればそれも伝える。後期高齢者では自分の感覚を伝えにくい人もいる。家族が日頃からメモし、共有しておくといい。

「原因不明の腹痛には急性間欠性ポルフィリン症といった希少疾患もあり、この病気では最初の症状の約8割が腹痛。腹痛で原因不明の人の中に少なからず含まれている可能性があります」

 たとえばこの急性間欠性ポルフィリン症は承認された薬があるので、診断がつけば症状軽減のための治療を受けられる。重要なのは、腹痛の原因を突き止めること。特に「急な激しい腹痛」「繰り返す」に該当するなら、総合診療科へ相談を。記者のように、緊急手術とならないように。

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