【Q】 昔は医師も「そりゃ老化だから仕方ない」と言っていましたが、最近はそう言いません。むしろ「老化」を「病気」扱いしている気がします。だとしたら治せるのですか?
【A】「アンチエイジング」という言葉が日常的に使われるようになり、「美魔女」がもてはやされる時代です。白髪や肌のシミは、まるでその人が不摂生をしているかのように感じる人も多いようです。
医学は出産時や乳幼児期の死亡リスクを減らし、感染症やがんを制圧することで寿命を延ばしてきました。
2019年の日本人の平均寿命は男性81.41歳、女性は87.45歳となっています。明治時代末期のそれが42歳くらいでしたから、倍に増えたことになります。
それでも科学的には人間は120歳まで生きる能力があるとされますから、医学はそれに向かってひた走ることでしょう。
いまは健康寿命を延ばすことも目標です。健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を言い、平均寿命と健康寿命の差をなくそう、つまり老化でよぼよぼした期間をなくそうとしています。
そんなことができるのかと思う人もいるでしょうが、実は老化がない動物は存在します。ネズミの一種のハダカデバネズミは健康のまま生きてパタッと死んでしまうといわれています。見た目が変わらないまま死ぬカメも報告されています。アホウドリもそうだといわれているそうです。
では、人間を不老不死にするカギとなるものは何か? いま、注目を集めているのが人間の最小単位である細胞を「いつも同じ状態」にしてくれる「オートファジー」と呼ばれる機能です。
これを簡単に言うと「細胞内のものを回収、分解してリサイクルしてくれる現象」のことです。
オートファジーという現象により、ヒトは飢餓状態になっても細胞が壊れることなく生きることができます。また、細胞が新陳代謝を行い、細胞内の有害物質を排出することができるのです。
つまり、このオートファジーと呼ばれる現象が故障することなく、続けられる限りは「老化を抑え」「寿命を長くする」ことが可能になるのではないか、というわけです。
それによって人類が健康長寿を手にして、「死なない」動物に進化したからといって幸福になるかは別の問題です。
しかし、医学はいま現在その方向に向かって突き進んでいるのです。
(弘邦医院・林雅之院長)
健康の「素朴な疑問」