ホントは怖い「リモート肥満」 新たなストレスを解消できず…

写真はイメージ
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 新型コロナウイルス第7波で注意したいのは、肥満だ。リモート生活で生活リズムが崩れ、そのストレスを食欲で解消させようとするからだ。その結果、高血圧、高脂血症、高血糖となり、知らぬ間に体がむしばまれていく。しかも冷房が筋肉を硬直化させ、血管や神経の痛みを発生させて頭痛を招く。夏場のリモート肥満の恐ろしさと対処法を「あきはばら駅クリニック」の大和田潔院長に聞いた。

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「新型コロナ禍のリモート生活で目立つのは肥満による体調不良です。外出しないことによる運動不足、いつでも食べられることによる食べ過ぎ、家飲みでの酒量の増加などが原因です。結果メタボが増えているのです」

 リモート生活での肥満が怖いのは仕事に関する新たなストレスが自宅内で生まれ、それを解消する場がないことだ。

「最初は通勤がなく、上司や同僚の目がないことに喜んでいた人も、一人で仕事をしていると『オレはこんなペースで仕事をしていて大丈夫なのか』と不安になり、むしろ労働時間が長くなる『リモート残業』が増えているのです」

 実際、システムエンジニアの管理職の男性はリモートで部下の仕事をチェックするようになったことで睡眠時間を削り仕事をするようになった。

「しかも職場と違って自宅のデスクでの長時間労働は心と体に大きな負担になります。椅子やテーブル、家庭の照明は長時間のパソコン作業には向いていません。会社から支給されたノートパソコンは性能が劣り、小さなモニターにイライラする人も多いのです」

 冷房の効いた自室で不自然な姿勢で長時間パソコン仕事を続けた結果、全身の血液循環が悪くなり、肩こりや頭痛が増えているという。

「これまでなら仕事は仕事場で終えて、ストレスは帰宅途中の赤ちょうちんで解消したりして、家に持ち込まなくてすみました。しかし、リモートワークで仕事が自宅内に持ち込まれたことで、仕事とプライベートの区別がなくなった。リズムが崩れる上に、食べ物やお酒が近くにある悪環境が重なっています」

 ただでさえ中高年は加齢とともに筋肉量や脂肪組織の代謝も変化し、わずかな生活環境の悪化が肥満につながりやすい。

「肥満は万病のもとで糖尿病の原因となります。高尿酸血症から痛風を発症させたり、脂肪肝や膵炎を招いたり、突然死の原因となる睡眠時無呼吸症候群の原因となります。大腸、前立腺、子宮、乳がんなどさまざまながんの原因でもあります」

■生活習慣病が複数重なると…

 肥満で注意すべきは高血圧、高脂血症、糖尿病といった生活習慣病だ。

「これらが複数重なるとメタボリックシンドロームと呼ばれ、死亡リスクが高くなります。血管が傷つき、もろくなって動脈硬化を発症させ脳梗塞や心筋梗塞などの死に至る病気を招くからです。日本人は欧米人に比べてインスリンの分泌能力が低く、糖尿病になりやすい。肥満はとくに気をつけなければなりません」

 忍び寄る恐るべき肥満を頭痛が気づかせてくれる場合もある。頭痛を訴えて来院した患者のなかには、糖尿病が悪化していたことが判明したケースが複数あるという。

「頭痛には種類があって頭全体がギューッと締め付けられる緊張型頭痛や、こめかみから目のあたりがズキズキする片頭痛などがあります。片頭痛は睡眠リズムの障害やストレス、緊張型頭痛は運動不足で起きやすいことがわかっています」

 メタボの人に頭痛が出たらメタボの悪化、日常のリズム障害や食習慣の悪化の可能性があると認識することが大切だ。

「まず、就寝、起床、食事、お茶の時間を決めて生活リズムを取り戻すことです。寝る前に筋トレするのもいいでしょう。若い人はそれだけで不調が治る場合があります」

 女性はリモート生活で偏食になりやすく、パンや麺類ばかりで糖質に偏り、タンパク質不足で貧血になりやすい傾向にあるという。

「女性が好む麺類は塩分が多く、高血圧になりやすい。外に出ない生活が続くと、精神を安定させる脳内物質であるセロトニンが減少して、うつっぽくなります。それを食事で紛らわせようとすると悪循環になりがちです。朝、ラジオ体操などをして日の光を浴びてリズムを取り戻し、適度に外出して社会性を取り戻す。食事も健康的なものに戻していくといいでしょう」

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